おきたまラジオNPOセンター・ひとりごとダイアリー

 

2018年7月30日(月曜日)福島県相双地方の天気:晴れ時々曇り 朝は場所により

【相双地方訪問記:野馬懸取材など】
 相馬野馬追(今年は7月28日〜30日の開催)3日目の“野馬懸:のまかけ”を取材するため、福島県南相馬市を訪問しました。

 相馬野馬追と言いますと、現在は2日目に行われる甲冑競馬や神旗争奪戦が有名です。しかし、“野馬追”という言葉を考えますと、甲冑競馬や神旗争奪戦は本来の意味から変化してしまったものと言えます。実は“野馬懸:上げ野馬の神事”こそが、相馬野馬追という本来の祭りの本質を残しているものなのです。「野馬懸を観ずして相馬野馬追を観たと言うなかれ」と思っている人は少なくないと思います。特に、野馬懸が行われる南相馬市小高区の人は、強く思っているように感じます。というわけで、「野馬懸を自分の目で観てみよう」と思い立ったのです。

 野馬懸は午前9時スタートです。それで米沢を発ったのは午前5時12分頃です。
 早朝でしたので、スムーズに移動でき、午前7時すぎには南相馬市原町区に到着しました。
 途中、飯舘村を通ったのですが、ところどころで霧に覆われていました。また、モニタリングポストは表示が消えていました。夜間は表示を消しているようです。

 原町区では、道の駅で簡単な朝食をとり、ひと休みです。
 このあと1ヵ所立ち寄ります。南相馬市原町区の萱浜地区・雫地区です。ここで第69回全国植樹祭が今年の6月10日に開催されました。下の2つの写真が、現在の会場付近の様子です。防災林として整備されています。波の音が聞こえる場所です。海風が涼しく、朝モヤが漂っています。

  

 国道6号を南下、小高区へ向かいます。途中いつも気にしている場所があります。それが下の写真です。野馬追の文字まで描かれていますが、この壁の内側には大量の放射線廃棄物が保管されています。道路の反対側にも同様に大量の放射線廃棄物が保管されています。広大な敷地です。ある地元の人は「小高は放射線廃棄物に囲まれている」と言っていました。

  

 午前8時30分頃、野馬懸会場の小高神社に到着しました。周囲の駐車場はほぼ満車です。朝から大勢の人です。幸い小高神社から近い場所に駐車できました。この場所(南相馬市小高区仲町2丁目)は小高に来ますと、よく立ち寄る場所です。
 小高神社前の境内は広場のようになっています。ここで野馬懸が行われます。
 次々に騎馬が集まってきました。そして、下の写真右のように、隣りの広場を周回しています。さながら、競馬場のパドックという感じです。

  

 よく見ますと、下の写真左のように、子どもたちも馬に乗っています。女のお子さんは一人で乗っています。家族ぐるみで馬に関わっていることがわかります。よく「地域に根付いている」と言いますが、そんな言葉では表現しきれません。馬は家族と同じです。

  

 午前9時、花火の合図です。神社の本殿前では、関係者への挨拶や訓示(上の写真右)、御水取の儀などがあります。やがて、周回していた騎馬隊が追い込み場所へ出発(下の写真左)します。

  

 境内では、相馬民謡など踊りの奉納(上の写真右)があります。
 このあと、御小人(おこびと)と呼ばれる人たちがお祓いを受け、会場の広場(祭場地)を清めます。
 午前10時30分頃、野馬の追い込み(下の写真左)です。一頭の馬を複数の騎馬が追う形で、会場から東へ数百メートル離れた場所から会場へ追い込まれます。追い込みは一頭ずつ、計3頭行います。一頭目が白馬、二頭目が芦毛、三頭目が鹿毛(または黒鹿毛かもしれません)です。下の写真右は3頭がそろったところです。

  

 芦毛のお馬さんが、下の写真左のように、横になってしまいました。砂を浴びているのです。これって、お馬さんにとって、気持ち良いです。

  

 いよいよ御小人たちによる野馬懸です。御小人の1人が、御神水を浸した駒とり竿を、一頭目の白馬の背に打ちかけます。うまく背にあたらず、転倒する場面も。背にあたりますと、御小人たちは素手で馬を取り押さえにかかります。上の写真右、下の写真がその様子です。

  

 捕まえられた白馬(下の写真左)は、神馬として神前に奉納されます。元々は追い込まれた馬から最も屈強な馬を御小人たちが見定め、それを神馬にしていましたが、震災前は5頭を追い込んでいたそうです。しかし、震災&原発事故後は3頭の追い込みとなり、一頭目の白馬を神馬にしています。これについて場内のアナウンス(説明)は「原発事故により・・・」と強調していました。
 2頭目の野馬懸です。芦毛の馬です。御小人たちが捕まえにかかります。しかし、馬に振り落とされます。(下の写真右)

  

 振り落とされた人は大の字に倒れます。水(御神水)をかけられますと(下の写真左)、たちどころに蘇生します。周囲から笑い声です。芦毛馬の捕獲再開です。ところが、ここでハプニングです。

  

 なんと、芦毛馬が場外へ逃亡したのです。(上の写真右)貴賓席の脇から場外へ跳びだしたお馬さんは観衆の後ろを通ります。そして、柵を打ち破って、追い込み口から会場内で突進します(下の写真左)。私の隣りからは「野馬懸は十数回見ているが、こんなの初めて」という声が聞こえました。芦毛馬はこちらへ向かってきましたので、周囲から「ここも危ないかも」という声が挙がりました。その後、芦毛馬は捕獲されました。

  

 3頭目は鹿毛(または黒鹿毛)の馬です。ここでも振り落とされるシーン(上の写真右)がありましたが、無事に捕獲されました。捕獲しますと、御小人たちは貴賓席に報告していました。(下の写真右)

  

 捕獲された2頭目・3頭目の馬はおせりにかけられます。下の写真です。値がつり上がり、せりが成立。こうして、相馬野馬追3日目の野馬懸は終了です。

  

 多くの人が神社に参拝していました。立ち入ることができるようになった広場を歩きます。下の写真右のように、広場中央には、砂が大量に運び込まれていることがわかりました。

  

 気が付くと、気温が上がり、暑くなってきましたが、米沢よりは涼しい感じです。
 はじめて拝見した野馬懸。地元の人が「これで1年が終わり。明日から新しい1年が始まる」というように、まさに地域あげてのお祭りであることを実感しました。一方で、御小人たちによる捕獲では「興行」的要素も感じました。

 小高市街地のほぼ中心に位置する“小高ぷらっとほーむ”でひと休みしたあと、浪江町へ移動、昼食をとりました。そして、請戸漁港に設置された見晴らし台へ向かいました。
 早速、見晴らし台の景色からご紹介します。

  
東                  南東

 東の奥は太平洋です。漁船が停泊している請戸漁港ですが、漁港自体はほぼ完成です。試験操業が行われています。

  
南                  南西

 南の奥は福島第一原発です。あとで拡大写真をご紹介します。南西の奥は、わかりにくいですが請戸小学校が見えます。

  
西                  北西

 西奥は、浪江の市街地と浪江町営太平山霊園があります。手前では、堤防が整備されています。ただし、ここの堤防は高いものではありません。堤防の内側には防災林が整備されます。

  
北                  北東

 北の手前では漁港に隣接する市場が整備されています。北東では漁港が見えてきました。

  

 上の写真左が福島第一原発です。ここから福島第一原発までの距離は、原発敷地中心部まで約6.5km、敷地の北側まで約5.5kmです。
 上の写真右は太平山霊園です。

  

 上の写真左は見晴らし台に掲示されていたものです。浪江の将来図です。
 上の写真右が見晴らし台です。

 太平山霊園にも立ち寄ります。

  

 上の写真左ですが、山形県の中学生一行が太平山霊園を訪れていました。
 上の写真右は、現在の宇宙桜です。

  

 上の写真左の中央に見えるのが、請戸漁港の見晴らし台です。堤防で頭しか見えませんが、逆に言いますと、それだけ堤防は低いということです。
 上の写真右のほぼ中央に見晴らし台はありますが、小さすぎて、よくわかりません。

 帰りは再び飯舘村を通りました。そこで目に付いたのが、下の写真です。ひまわり畑です。ひまわり畑は佐須地区などで広く見られました。

  

 このあたり規制は解除され、帰還して生活をはじめている人たちもいますが、0.4〜0.5、場所によっては0.9以上を示すモニタリングポストの数値は、どうしても気になります。

 

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