おきたまラジオNPOセンター・ひとりごとダイアリー

 

2018年11月24日(土曜日)福島県相双地方の天気:晴れ日中一時浮かぶ 仙台市夜の天気:晴れ

【浪江・小高訪問記】
 このところ、福島県の南相馬市や浪江町から気になる情報が伝わってきましたので、現地に赴くことにしました。「この3連休がチャンス」と考えていましたが、昨日(11月23日)は米沢でも初雪が降るなど悪天候でしたので断念。きょう(11月24日)も「天気予報から行くことができるのかな?」と思っていました。それが今朝になって、思いのほか良い天気でしたので、出向くことにしました。
 いつもより遅い午前8時30分すぎの米沢発でしたが、移動は順調でした。栗子峠付近は見事な雪景色でしたが、福島県は中通りも浜通りも晴れの天気です。

 午前11時前には浪江町に到着します。
 コンビニに立ち寄りますと、トイレに行列ができています。いつもの浪江町より人の数が多い印象です。なにか、ありそうです。

 はじめに、“あおた荘”(福島県双葉郡浪江町権現堂御殿南18-8)を訪問しました。『誰でも来られる集いの場 ~ゲストハウスあおた荘~』というインフォメーションが気になったからです。
 昨年(2017年)3月31日に一部の地域で避難指示が解除された浪江町。しかし、町役場近くに“まち・なみ・まるしぇ”が開設されただけで、みんなが集える場所はありませんでした。それで気になったのです。
 “あおた荘”は市街地のほぼ中央にあります。ただ、初めての人にとっては、場所はわかりにくいです。下の写真左が“あおた荘”です。普通の住宅に感じますが、元々は下宿だった建物です。
 外で電話していた男性(後で福島大学の教授だったことがわかります)に声をかけ、中にいるスタッフの方を呼んでもらいます。中から出てきたのは、和泉亘さんです。“あおた荘”の管理人です。“あおた荘”のサイトでは「震災後、避難した人が住む復興住宅の支援を行い自治会形成、コミュニティ形成などの活動していました。2018年春、浪江に移住!」と紹介しています。

  

 和泉さんの案内で、中を見せてもらいます。
 数人の学生さんがいます。福島大学や早稲田大学の学生さんです。途中で1人の学生さんが入ってきました。やはり早稲田大学の学生さんです。東京から来ました。
 学生さんたちが関わっているには、上の写真右の“浪江す米(まい)るプロジェクト”です。部屋の中では学生さんたちが作業しています。明日(11月25日)“復興なみえ町十日市祭”で販売するお米を準備していたのです。そのチラシが下の写真左です。私などは、そもそも浪江町で稲作が行われていることすら知りませんでしたので、ビックリです。ただし、ビックリだけではない感慨を持ったのも事実です。検査はしているのでしょうが・・・。
 2階にも案内してもらいました。“あおた荘”は宿泊できます。5部屋あります。主に学生さんやボランティアの人たちが泊まっているそうです。
 運営について尋ねますと、和泉さんは「いろいろなことをやっていますから」と話されました。

  

 “あおた荘”の印象は「みんなが集う場」というより、活動の拠点と宿泊施設という印象です。サイトで紹介されている利用例は「宿泊利用(2018年6月~)、ワークショップ利用、コワーキングスペース利用、休憩スペース」です。やはり、活動のための施設という感じです。
 また、浪江町の復興には、南相馬市小高区と同じように「よそ者・バカ者(若者)」の力が必要なのかな・・・という印象も持ちました。これをどのように解釈すれば良いのか・・・?
 “あおた荘”は市街地のほぼ中央にありながら、周囲は空き地が多いです。そして、少し離れたところでは、建物の解体(上の写真右)が行われていました。

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 “あおた荘”に近くに、下の写真のような風景がありました。災害復興公営住宅と思われます。建物は出来上がっており、内部の整備が行われているようです。ただ、この住宅が最終的に落ち着ける住宅になるとは限りません。とにかく複雑です。 

  

 浪江駅に向かいます。駅前駐車場が満車です。ビックリです。案内により近くの中央公園に駐車します。広い中央公園ですが、ここもほぼ満車状態です。係員の誘導で、空いている場所に駐車します。

 次に訪問したのは、一昨日(11月22日)にオープンしたばかりの“かふぇ もんぺるん”です。
 お店の前にテントが張られています。大道芸パフォーマーの屋台です。声を掛けますと、皿回し体験を勧められました。「できるかな?」と思いましたが、意外に回せました。チョッピリ楽しくなりました。ほかにも、コマやいろいろな遊びがありました。
 大道芸パフォーマーの方は、東京から来られたそうです。山形県にも時々来られるそうで、飯豊町の“道の駅飯豊・めざみの里”でもパフォーマンスしているそうです。

  

 店に入ります。ほぼ満席ですが、たまたま空席になった場所に案内されます。
 メニューを見ます。コーヒーなどの飲み物と、食事は2つのメニューです。ナポリタンと日替わりランチです。ナポリタンは売り切れたそうで、日替わりランチを注文します。きょう(11月24日)は“なみえ焼きそば”です。注文しますと、「時間がかかりますので、よかったら、展示をご覧ください」と紹介されます。

 展示とは、下の写真左です。浪江町を地区ごとに紹介しているほか、イベント情報や各種情報が掲示されています。そこに、ひとりの男性がいました。
 男性の方から「どちらの地区の方ですか」と聞かれましたので、私は「山形県から来ました」と答え、「今年も数回来ています。中でも請戸地区にはよく行きます」と話しました。すると男性は「請戸に住むことはできなくなりました」と紹介されました。
 その男性とは、“かふぇ もんぺるん”を運営する一般社団法人“まちづくりなみえ”の地域づくり支援専門員・河原さんです。河原さんは「行政ではできないことを私たち民間の力でやっていきます。それも、利益目的ではなく、地域興しが目的なので、一般社団法人として設立しました。将来は、国道6号線沿いに開設計画がある道の駅の運営を担います。“かふぇ もんぺるん”はそれを見据えたひとつのステップです。“まちづくりなみえ”の事務所は、この建物に2階です。またお越しの際は、立ち寄ってください」と話されました。
 浪江町も一般社団法人“まちづくりなみえ”の運営に対しては支援していますが、ここにも、NPO法人ではなく、一般社団法人という事例が見られました。

  

 そうこうしている内、料理が出来ました。上の写真右です。なみえ焼きそばとカフェラテです。
 まず、カフェラテのカップに注目です。なんと!大堀相馬焼(おおぼりそうまやき)のカップです。大堀相馬焼は江戸時代から続く浪江町伝統の陶器です。しかし、東日本大震災と原発事故で25軒の窯元は散り散りになります。それでも、一部は二本松市で陶器作りを続けます。ただ、原料の違いや気候の違いで苦労を強いられます。それでも伝統を守ろうと、懸命の努力が続きます。
 大堀相馬焼は二重焼きが大きな特徴です。熱いものでも持つことができる、冷めにくいという大堀相馬焼ならではの魅力が、ここにあります。カップに穴が開いているように見えるのも、二重焼きの成せる技です。もちろん、なみえ焼きそばの皿も大堀相馬焼です。
 なみえ焼きそばは、これまで食べたなみえ焼きそばより、麺はやや細いですが、味がしまっていて美味しいです。シャキッとしたもやしも美味しいです。カフェラテも程良いあたたかさで、飲みやすいです。大堀相馬焼のカップが、ホッとする気分になります。
 スタッフの女性の方は「オープンしたばかりで、バタバタしていて、すみません」と謝っていましたが、ほとんど気にはなりませんでした。
 BOSEのオーディオから流れる音楽も、高音質で心地良かったです。
 開店記念のお土産までもらいました。立派なガラス製カップなどです。

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 さて、先程からきょう(11月24日)の浪江町は、人の数が多いとか、広い駐車場が満車などとお伝えしてきましたが、その理由は、浪江町での最大イベント“復興なみえ町十日市祭”が開催されているからです。
 今年(平成30年)の“復興なみえ町十日市祭”は、きょう(11月24日)と明日の2日間、浪江町地域スポーツセンターにて開催です。「つなごう・つながろう浪江!」をテーマに、浪江名店街大露店市という“復興なみえ町十日市祭”。
 今回は“NPBベースボールフェスタ 2018 in 浪江町・十日市祭”と“大せとまつり”が同時開催です。

 “かふぇ もんぺるん”には“昭和の十日市祭”が掲示されていました。明治時代から続くという歴史ある“十日市祭”は、浪江町にとって欠かすことのできないイベントです。震災と原発事故後は、二本松市で続けてきましたが、避難指示が解除されたということで、昨年は震災と原発事故後初めて浪江町で開催しました。今回は地元復活開催の2回目です。
 加えて、今年は“大せとまつり”が震災と原発事故後初めて開催することになりました。まさに8年ぶりの開催です。“大せとまつり”とは、先にもご紹介した大堀相馬焼の窯元が集う、これまた浪江町にとっては重要なイベントです。震災前は5月開催でしたが、今回は“復興なみえ町十日市祭”との同時開催です。

 それでは、会場の様子をご紹介します。
 浪江駅から徒歩で会場に向かいます。踏切をわたると、すぐ会場です。

 入口を入って、驚いたのは、広大な敷地(駐車場)がすべて埋まっていることです。なんでも、出店数は200を超えているそうです。それが1ヵ所に集約されていますので、巨大なイベントという印象です。人出も凄く、2ヵ所の広い飲食・休憩スペースも人で埋まっていました。

 まず目に入ったのは、福島県立小高産業技術高等学校のブースです。JAや長登屋との協力で、クッキーやタルトなどお菓子を販売しています。小高産業技術高等学校(南相馬市小高区)は、震災後、小高工業と小高商業が合併した創立した高校です。ブースは写真のとおり大にぎわいです。

  

 私が購入したのは、下の写真の2つの商品です。米粉のクッキーにかぼちゃのタルトです。

  

 そこから進むと、会場北側の“大せとまつり”です。5つの窯元のテントが並んでいます。

  

 上の写真左では、テントの中で、ろくろ体験や絵付け体験が行われています。報道機関による取材風景もあちこちで見られ、注目の高さを感じました。8年ぶりの浪江町開催は、関係者にとって大きな喜びでしょう、

  

 下の写真左は、相馬双葉漁協請戸支所青壮年部のブースです。たくさんの海の幸を販売しています。試食もあったそうです。

  

 その請戸ですが、なんと!浪江町の(公式)イメージアップキャラクターは“うけどん”です。私のカメラにもポーズをとってくれました。“うけどん”は、請戸川の鮭をイメージした帽子、いくらをイメージした髪の毛、大堀相馬焼のどんぶりに入った小さな女の子で、2014年に誕生しました。

 ステージは2ヵ所設けられていました。それだけでも大きなイベントと感じます。

  

 上の写真左は屋外ステージです。浪江町出身のシンガー・ソングライター、牛来美佳さんのステージです。
 上の写真右と下の写真は屋内ステージです。浪江町川添芸能保存会の神楽奉納です。

  

 屋内のもう1つのフロアで催されていたのが、“NPBベースボールフェスタ 2018 in 浪江町・十日市祭”です。一角では、お笑いステージが行われていたほか、お子さんがストラックアウトにチャレンジしていました。

  

 屋内の中央通路では、浪江町の人たちの作品が展示されていました。

  

 再び外に戻って、いわゆる屋台も数多く建ち並んでいますので、とても全容を紹介することはできませんが、なみえ焼きそばの店だけでも、少なくても4ブースあったのには驚きました。

  

 上・下の4枚の写真になみえ焼きそばの店が写っています。見た目ですが、麺の太さも店によって違う感じです。

  

 とにかく、震災前の人口が約2万人だった浪江町の人口規模を考えますと、巨大なイベントという印象が強いです。来場者も凄いです。ニュースでは、きょう(11月24日)だけで、1万7千人以上の来場者だそうです。帰還率数パーセントであることを考えますと、信じられないほどの多さです。それだけ故郷への思いは、言葉では表現できないほど強いのでしょう。
 しかしそれは、見方を変えますと、「帰還したくても出来ない」思い、「帰還を促されても(心配・不安・不信により)帰還する気にはならない」思いが、多くの来場者につながっているようにも感じるのです。
 イベントが終われば、元の静かな浪江町に戻るのでしょう。なぜ、そうなるのか。帰還を促すのではなく、「帰還したい」と思えるような環境を整えることに力を注ぐべきです。

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 南相馬市小高区にも立ち寄りました。この時期の小高と言えば、イルミネーションです。

  

 上と下の4枚の写真は、小高浮舟ふれあい広場に設置されたイルミネーションです。

  

 下の写真は小高駅前のイルミネーションです。

  

 よく見ますと、イルミネーションにはメッセージが書き込まれています。

  

 柳美里さんが開設したフルハウスは改装中のため現在は休業中です。窓から見える建物内は、確かに工事中です。
 駅前通りでは、歩いている人(それも数人のグループで)を見掛けました。仕掛けがあるようです。小高駅前では、プロモーション制作と思われる人たちを見掛けました。
 小高でも、人の動きが見られました。

 今回の目的地、“Odaka Micro Stand Bar(オムスビ)”(福島県南相馬市小高区東町1丁目67:下の写真左)を訪ねます。カフェです。
 中に入ります。スタッフの女性と、3人のお客さんがいました。
 入口で靴を脱ぎます。注文します。メニューは、コーヒーやカフェラテなどです。豆を選ぶことができます。前払いです。持ち帰りもできますが、「ここで飲んでいきます」と言いますと、「奥の部屋でも飲むことができます」と案内されました。テーブルを囲んでゆっくりできました。

  

 スタッフの男性が入ります。豆をひいて、注文に応えます。しばらくして、コーヒー(上の写真右)が出来ます。なんと、ここでも二重のグラスです。優しさを感じます。私が注文したカフェラテ(下の写真左)も出来ます。
 コーヒーやカフェラテを部屋に運ばれた男性の方が言います。「以前、小高駅前でお会いしていたと思いますが・・・」。このひと言で、すべてがわかりました。

  

 男性は森山さんと言います。大阪出身の森山さんは、震災後「自分ができることはないか」という思いで、南相馬市に来ます。森山さんは南相馬市が気に入り、住み着きます。鹿島区で事業を始める傍ら、土日は小高駅前で移動カフェ(車を使ってのお店)を開きました。本格的コーヒーで、とても美味しかった記憶があります。
 その小高駅前での移動カフェの経験が“Odaka Micro Stand Bar”につながりました。
 “Odaka Micro Stand Bar”は、火・木・土曜日が営業日です。これも考えてのことだそうです。日曜日よりも、平日や土曜日の方が高校生や地域の人たちが立ち寄りやすい、と感じたからです。
 小さなお店なので、そんなに多くの人は入れませんが、森山さんのお店(カフェ)となれば、私は気軽に入れます。そして、ゆっくりできます。これも、幾度となく小高に通ったおかげと思います。ありがたいことです。
 ブレンドの豆で作ってもらったコーヒーやカフェラテは、優しい味・和む味でした。

 さて、“Odaka Micro Stand Bar”とは、実は一般社団法人だったことが、米沢に戻ってからわかりました。一般社団法人は“Odaka Micro Stand Bar”の頭文字(OMSB)から“オムスビ”としました。
 一般社団法人“オムスビ”は、2017年4月の設立です。森山貴士さんが代表理事です。
 なぜ、一般社団法人を設立したのか。それは、南相馬市小高区での復興が進まないからです。その理由を森山さんたちは「小高に於ける課題に対して、活動する人たちのスキルやノウハウが不足しているから」と考えました。この状況を打破するには、レベルを上げる、仲間を集める、そして強い武器と防具を手に入れ、使いこなす・・・ことが必要と考えました。そして、その人財として期待しているのが、小高産業技術高校に通う高校生です。

 こうして小高でがんばっている人たちと触れ合いますと、複雑な心境に陥ります。なぜなら、見えないものへの不安というより、大きなものに対する不信感によるものです。それは悲しくもあります。
 世界中でますます深刻になる市民同士の『分断』。日本での『分断』の原点は、東日本大震災であり、原発事故であり、『分断』を誘導しているモノであります。本当に悲しいです。優しく、温かい心を持つ森山さんを拝見しますと、ますます悲しくなります。

 きょう(11月24日)の浪江町・小高訪問では、いろんな人たちと出会い、触れ合うことができ、嬉しくもあり、良かったという思いです。一方で、悲しい気持ちもあります。

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 同行した家族のリクエストで、夜は仙台市に立ち寄りました。
 仙台では特に用事の無かった私は、AER31階の展望テラスに行きました。
 それでは、仙台の夜景をお楽しみください。なお、撮影では、室内での光の入り込みに注意しましたが、やはり入り込みがありました。お詫びします。

  

 上の写真左は北方向、上の写真右は南西方向、下の写真左は西方向です。下の写真右は東方向です。真ん丸いお月様が輝いています。

  

 下の写真右は南東方向です。下の写真右では新幹線が写っているのですが、よくわからないですね。上から新幹線を見ても、おもしろくないことがわかりました。

  

 というわけで、米沢の自宅に戻ったのは夜11時頃です。

 

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