おきたまラジオNPOセンター・ひとりごとダイアリー

 

2023年4月2日(日曜日)福島県浜通り〜宮城県南部:曇りで時々晴れ間あり

【福島県浜通りから宮城県南部訪問記】
 今年も桜の開花に合わせ、福島県浜通りを巡りました。午前5時前に米沢を発ちました。その米沢はこの日も快晴でしたが、こちらは雲の多い天気です。そして、とにかく肌寒いです。

 はじめに、富岡町の夜の森桜並木です。北側は約1200メートル、南側は約800メートルの桜並木です。

  

 こちらが北側です。午前7時台ですので、静かです。
 桜並木の裏に建物が見えます。しかし、これまではここに住むことはできませんでした。国が指定した帰還困難区域だからです。それが、特定復興再生拠点として、人が住めるように重点的に除染し、4月1日の午前9時をもって、避難指示が解除されました。これまでは南側の一部だけが解除されていましたが、今回の解除で桜並木のすべての周囲で住めるようになりました。解除はちょうど満開と重なり、連日大きく報じられ、テレビでも中継されています。4月1日にはここで記念式典が開かれ、岸田首相も出席しました。岸田首相は桜並木の視察しました。報道関係者用の駐車場が準備されていたほどです。この時間、報道関係者の姿はありませんでした。中継もなしです。

  

 北側では脇には公園や遊び場が整備されました。ただ、このあたりの放射線量は0.1μSv/h を超えています。

  

 続いて、南側の桜並木です。こちらも見事に満開です。

  

 JR夜の森駅に向かいます。桜並木をはずれると下の写真左のとおりです。避難指示が解除されたばかりですので、仕方ないですが、本当に復興ができるのか・・と思いますし、そもそも復興とは何か・・と問いたいです。

  

 夜の森駅での線路は地表より低いところです。JR夜の森駅の放射線量は0.18μSv/h です。

  

 再び桜並木に戻ります。南側でも震災当時のままの建物がみられ、桜並木の美しさとは対照的です。また、避難指示が解除されたばかりということもあってか、この時間(午前7時台)から複数のパトカーが警戒に当たっていました。

  

 この日(4月2日)はこのあと、ここでイベントが行われるそうで、会場では準備が進んでいました。日曜日でもあり、混雑が予想されます。ちなみに、北側は午前9時から車両通行止めです。私は午前8時前には桜並木をあとにしました。
 国道6号を北上します。下の写真左は大熊町地内です。放射線量が表示です。

  

 上の写真右は国道6号から見た福島第一原子力発電所です。ここは大熊町ですが、まもなく双葉町に入る地点です。周囲は帰還困難区域です。

 JR双葉駅です。双葉町は広い範囲で帰還困難区域でした。このうち、双葉駅周辺は、特定復興再生拠点として、先行して人が住めるように重点的に除染し、2020年3月に避難指示が解除されています。

  

 上の写真左が駅舎です。上の写真右が放射線量です。この値をどのようにみますか?

  

 上の写真左が双葉駅の向かい側にある双葉町役場です。駅舎と役場の間にあるロータリー中央には桜の木が植樹されていました。下の写真は路線バスです。ただ、日曜日だからでしょうか、午前8時すぎのこの時間、駅前は閑散とし、バスの乗客もほとんどおりませんでした。

  

 上の写真右は役場の駐車場で撮影です。震災当時のままの建物です。駅舎の近くには震災当時のままのスナックもありました。ニュースではきれいな映像だけが放映されますが、実際にはそれだけではありません。ここでも「無理して復興させているのではないか」と思ってしまいます。役場庁舎と駅舎だけが復興した印象です。

 浪江町の請戸漁港です。

  

 数多くの漁船が停泊です。カモメもおります。下の写真右は請戸漁港から見た福島第一原子力発電所です。処理水の海への放出が心配です。

  

 漁港の南側は広場になっていたのですが、下の写真左のとおり、様相は一変、工事現場となり、数多くの波消しブロックが置かれていました。

  

 その南側は砂浜です。上の写真右では右端が福島第一原子力発電所です。下の写真左も福島第一原子力発電所です。

  

 海に人影が見えます。望遠で撮影したら、サーフィンの人たちでした。風は寒く、海の水も冷たいのではないかと思うのですが、楽しそうにしています。その様子を眺める人や近くでは交流する風景も見られ、駐車場は多くの車でした。原発とサーフィンです。

  

 請戸住宅団地です。この住宅団地については、私が関係するNPOがコミュニティ支援に取り組むことになっています。

  

 請戸地区は住めなくなったため、海から約1.8kmの高台に住宅団地を造成です。浪江町営大平山霊園の南西方向です。

  

 すでにここでの生活が始まっていました。下の写真右は集会所です。

  

 住宅団地の西側には浪江町南産業団地があります。下の写真です。

  

 浪江町営大平山霊園です。下の写真左の右端が慰霊碑、その奥が震災遺構の浪江町立請戸小学校です。左端は宇宙桜です。その宇宙桜ですが、写真右のとおり、花は僅かに咲いているだけです。

  

 下の写真は浪江駅前です。空き地・更地が目立ち、復興という雰囲気はありません。最近になって、ここでの再開発の話が出てきました。動向を注視します。

  

 浪江町では4月1日、町内に福島国際研究機構が開所しました。開所式には岸田首相も出席しました。実際の施設は2030年までに浪江町川添地区に東京ドーム2つ分の敷地に建設する計画です。それまでは浪江町の施設に間借りする形で事務所を設け、そこを拠点に活動します。その場所は、私がいる浪江駅の反対側(南南西側)です。
 国や福島県はこれを復興の中核拠点にしたい考えです。しかし、地元住民の雇用先になるとは考えられません。それは、同じく浪江町にある福島水素エネルギー研究フィールドにも言えることです。南相馬市の福島ロボットテストフィールドも同じです。国や福島県が帰還する人が少ないことを見据え、交流人口を増やすことで、この地域の復興を目指そうというのでしょうが・・・。
 浪江町では、道の駅は、週末・平日関係なく、常ににぎわっています。この日(4月2日)もほぼ満車でした。ここは地元の人の雇用がありそうです。ただ、浪江町でにぎわっているのは道の駅だけです。ここでも「復興とは・・?」という思いになります。

  

 請戸川リバーラインの桜並木です。今年も見事に咲き誇っています。

  

※この部分は5月14日に一部を書き換えました。
 日曜日ということで混雑を予想してきたのですが、平日とそんなに変わらない人出でした。それでも花見を楽しく人たちの姿がありました。桜並木では、テレビ局のクルーが取材していました。山形ナンバーということで、スタッフから声を掛けられましたが、放送用のインタビューまでは求められませんでした。
 5月14日の朝、NHK総合テレビで“小さな旅”が放送されました。それは“福島県浪江町、再会!心をつなぐ桜並木”でした。番組を観て、ハッと気付きました。私に声をかけたのは“小さな旅”に出演しているYさんだったことです。
 番組を観ながら、私もなぜかこの桜並木を毎年観てきていることに気が付きました。

  

 南相馬市小高区です。下の写真は駅前通りと小高浮舟ふれあい広場前の桜です。

  

 haccoba-Craft Sake Brewery - を訪ねました。下の写真です。

  

 外見は写真のとおり、普通の民家です。営業中ということで、建物に近づくと、中から女性の方が出てきました。そして、中に入りますと、糀の香りが漂います。工房では男性1人が作業していました。
 このあとは、その女性にお聞きした話と、私が調べた内容を総合してご紹介します。
 女性は佐藤さんと言います。佐藤さんのご主人が haccoba-Craft Sake Brewery - を立ち上げたのは 2021年2月です。東京に住んでいた佐藤さん。大学を卒業後は一般企業に勤めます。しかし、大学時代に魅了された日本酒が忘れられず、2019年に会社を辞め、日本酒づくりをゼロから学びます。酒蔵を立ち上げた人の話を聞いていくうち、「自分でもできるかもしれない」と思うようになったことも、原動力になったようです。
 私は「なぜ小高を選んだのですか?」と尋ねますと、佐藤さんは「和田さんの話を聞いたからです」と答えました。私は「そうではないかと思っていました」と応じました。
 和田さんは会津でIT関連の事業を行っていましたが、震災と原発事故をきっかけに、故郷・小高にUターン。株式会社小高ワーカーズベースを立ち上げ、ゼロからの町づくりに取り組みます。和田さんのもとには各地から若者が集い、小高での大きな力になっていきます。過去のことになりましたが、“おだかのひるごはん”を立ち上げたのも和田さんでした。小高パイオニアヴィレッジは宿泊できるコアキングスペースで、起業家のための創業支援にも取り組んでいます。
 佐藤さんは「この建物は和田さんからお借りし、酒蔵に改装したものです」とも話されました。確かに、写真右に写っている表札は「和田」となっています。
 営業中ですが、日中はお酒の販売のみです。ここで飲食ができるのは、週末の夜だけです。私にとっては、少し残念です。
 佐藤さんと話している最中、1人の男性が入ってきました。お酒を買いに来たようですが、在庫なしで買うことはできませんでした。お酒は好評のようですが、生産数が限られていることもあってか、在庫なしになることもあるようです。
 「自由な酒づくり」を大切にし、クラストサケという新たなジャンルを立ち上げたいそうです。ビールの原料であるホップなどを加えたのがクラストビールならぬクラストサケです。
 私が「お米は何ですか?」と尋ねると、佐藤さんは「福島県産米の“天のつぶ”です」と答えました。酒米ではありません。これも「自由な酒づくり」の一環なのでしょう。
 メンバーは佐藤さんたちを含め6人です。全員が外からの移住者です。写真をみますと、若者です。そして、小高では初めての酒蔵です。地元の人たちとの関係はわかりませんが、小高での新たな動きのひとつと言えるでしょう。
 一方で、小高から離れて暮らしている人にとって、こういう動きに対して、どのように思うのでしょうか。福島第一原子力発電所で現在行われていることが「綱渡り」であることを忘れてはなりません。放射線量を心配する人の思いも尊重しなければなりません。それぞれの思いを理解・尊重してこその復興であり、町づくりです。
 佐藤さんは、私たちが敷地を出るまで見送っていました。

 相馬小高神社です。こちらも桜が満開です。

  

 日曜日で混雑を予想しましたが、こちらも平日とほとんど変わりませんでした。

  

 それでも一角でシートを敷いて花見を楽しむ人たちがいました。

  

 神社では社務所等の改築工事が行われています。工期は今年の9月までとなっています。

  

 小高川沿いの桜並木も満開です。上の写真右と下の写真左が上流側、下の写真右が下流側です。

  

 このほか小高では、小高浮舟ふれあい広場内のひまわりカフェで休んだり、小高交流センター内の食堂でお昼を食べたりしました。
 小高浮舟ふれあい広場は、周囲に交流できる施設が増えたこともあり、以前ほどの活気がないように感じます。座敷の本棚の撤去されていました。以前は講演会など様々なイベントが開かれていました。
 小高交流センターの食堂やカフェでは、ひるどきになると、多くのお客さんで、カフェのランチは完売していました。マルシェもお客さんの姿があり、遊び場では子どもたちが元気に遊んでいました。ただ、にぎわっている雰囲気は感じません。「日曜日だからにぎわう」というのは固定概念かもしれません。
 小高全体をみて感じたのは、日曜日なのに、休みのお店や施設があるということです。別の曜日に来ると、別のお店や施設が休みだったりして・・・。というわけで「小高全体で地域を盛り上げよう」という雰囲気が感じられません。以前より逆に寂しい感じです。もちろん、やり方は「それぞれ」ではありますが・・・。

 南相馬市原町区の雲雀ヶ原祭場地です。

  

 隣接する陸上競技場の桜が満開です。今年も相馬野馬追は7月下旬(29日〜31日)の3日間開催されます。

  

 南相馬市では今年の2月26日、強盗殺人未遂事件が発生しました。下の写真がその現場です。南相馬市原町区舘沼地内です。

  

 この事件では、これまでに5人が逮捕されていますが、検察は4月3日、このうち1人を起訴の判断に至らなかったとして、処分保留のまま釈放しました。今後は任意で捜査を続けるそうです。

 このあとは宮城県に向かいます。宮城県では角田市に立ち寄り、亘理町ではMさんの店を訪ねました。ちなみに、亘理町のガソリンスタンドで給油しましたが、山形県内より遥かに安いです。
 しばらくMさんのお店に滞在したあと、柴田町に向かいました。

 白石川堤一目千本桜です。 

  

 県道50号沿いの有料駐車場に車を停め、県道沿いを少し歩きますと、上の写真右の県道と東北本線をまたぐ橋です。橋にあがると、写真のような景色が展開です。

  

 桜並木は、まさに果てしなく続きます。写真でご堪能ください。

  

  

  

  

  

 ライトアップされました。

  

 下の写真右では、東北本線を電車が通っています。

  

 情報では、日中は県道では渋滞となるなど大混雑だったようです。この時間(夕方6時頃)は渋滞も解消し、比較的スムーズに着くことができました。それでも多くの人でにぎわっていました。とにかく、スケールの大きさに圧倒されました。

 というわけで、ちょっと欲張った感じですが、夜の8時30分頃、米沢に戻ることができました。ここでは、福島県側を中心にご紹介しました。

 

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