おきたまラジオNPOセンター・ひとりごとダイアリー

 

2023年11月26日(日曜日

【映画『風に立つ愛子さん』上映会&トークイベント】
 鶴岡市で朝を迎えました。僅かに青空は見えますが、雲が多かったです。やがて、青空が広がっていきました。下の写真は午前9時34分〜35分、鶴岡市山王町で撮影です。写真左の左側奥が鶴岡駅方向、さらに奥には鳥海山が見えます。写真右は鳥海山を望遠で写したものです。頂上付近だけが雲に覆われています。きょう(11月26日)は荒れる予報でしたが、穏やかです。

  

 鶴岡市での目的は、ドキュメンタリー映画『風に立つ愛子さん』上映会&トークイベントが鶴岡まちなかキネマで開催されたからです。このイベントのチラシはこちらです。写真左が鶴岡まちなかキネマ、写真右がトークイベントの様子です。

  

 昨日(11月25日)、藤川佳三監督と約11年ぶりに再会しました。
 2011年4月22日、私は石巻市立湊小学校にいました。それは、当時の石巻市立湊小学校の校長先生から「小学生や周囲の保育園・幼稚園の子どもたちを集めますので、元気付けてください」というリクエストが鶴岡市の“だがしや楽校”関係者にあったからです。当時、鶴岡市には日本玩具協会から、被災地の子どもたちのために寄贈されたおもちゃや絵本などがありましたので、それを持って、石巻市立湊小学校へ行くことになりました。ちなみに、日本玩具協会からの寄贈のきっかけは、私のコーディネートによるものです。
 この日は鶴岡市に加えて、東北芸術工科大学の学生さんも活動に参加、私は学生さんを車に乗せて、現地に向かいました。現地では学生さんを中心に“だがしや楽校”を開きました。子どもたちは楽しく遊びました。絵を描く場もありました。絵の中には、津波に遭遇した思いを表現したものもありました。湊小学校での津波の高さは、校舎の1階の天井付近です。
 また、体育館では玩具や絵本をプレゼントしました。
 この時、1人の男性がビデオカメラを携えていました。私は「マスコミ関係者」と思いました。
 私の脳裏には、東日本大震災から僅か1か月と11日目の、湊小学校やその周辺の光景が脳裏に焼き付きました。今でもその光景は鮮明に記憶しています。4月22日という日付けも忘れることができません。

 2012年の夏、NHKのテレビニュースで、ドキュメンタリー映画『石巻市立湊小学校避難所』が制作されたことを伝えました。そこで私が観たものが、私の脳裏に焼き付いている湊小学校の光景でした。私は衝撃で身体が凍りました。咄嗟に「もしや」と思いました。私は自分が撮影したビデオ映像をチェックしました。ビデオカメラを携えていたのは、マスコミ関係者ではなく、この映画の監督の藤川佳三だったことがわかりました。
 私は映画の制作会社経由で藤川監督に連絡しました。まもなく、藤川監督から「間違いなく、それは私です」という返事でした。そして藤川監督からは「山形でこの映画の上映会を開いてくれませんか」という依頼がありました。
 多くの人たちの協力により、2012年11月23日から12月8日にかけて、映画『石巻市立湊小学校避難所』上映会が山形県内5か所で開催されました。上映会には藤川監督が駆け付け、ステージトークを行いました。最後の上映会は12月8日、当時のシベールアリーナで開かれました。藤川監督と一緒だったのは、これが最後でした。昨日の再会は、それ以来です。

 映画『石巻市立湊小学校避難所』では、避難所で生活した様々な人が紹介されました。その人たちの中で、特に印象に残った1人が村上愛子さんでした。藤川監督は、石巻との関わりを一過性にしたくないという思いがありました。また、生涯独身を貫いた愛子さんから、1人暮らしの被災者のその後を取り上げたいという思いもあり、愛子さんのその後を撮影し、映画として制作することにしました。こうして、2022年に完成したのが映画『風に立つ愛子さん』です。 
 2023年9月3日、藤川監督からメールがありました。メールは、映画『風に立つ愛子さん』を紹介した上で、上映の依頼でもありました。正直に言えば、私としては、連絡が途絶えてしまったことへの思いもあり、いきなりの上映依頼に感じるものはありましたが、阿部等さん(山王商店街・公益のふるさと創り鶴岡)が尽力されたことで、この日の上映会&トークイベント開催につながりました。
 上映とトークイベントは、午前と午後の2回行われました。午前は満席(定員40人)でした。午後は10人ほどが集まりました。
 トークイベントでは、被災地支援に取り組んだ鶴岡市の人たちが、映画を鑑賞しての感想やこれまでに活動してきたことを話されました。午後の部では、復興ボランティア支援センターの結城さんと私もトークに出演しました。私は、上記にも記したこれまでの経緯を紹介しました。

 映画『風に立つ愛子さん』について、ある人から「チラシを見たが、どんな映画なのか、さっぱりわからない」という声がありました。それを聞いた藤川監督は、映画を制作することにした思いや映画で伝えたいことを文章にしてまとめ、鶴岡へ送った経緯がありました。
 この映画は、ひとりの被災者のその後を追ったものです。そこに特段のエピソードがあったわけではありません。だから、「つまらない映画」と言われてしまうかもしれません。チラシから伝わらないのは、このためかもしれません。また、「震災に関する映画はもう観たくない」という人が多くなっていることも、この映画を映画館で上映することを難しくしているかもしれません。
 しかし、この映画には、隠されたテーマやメッセージが様々あります。奥が深いです。震災関連の映画という見方もできますし、私などは「人の生き方について考えさせられる映画」と強く感じました。人の生き方は、人それぞれですし、無限にあります。これを考えただけでも、この映画は無限のテーマやメッセージを持っているのです。
 「思い出」についても考えされられます。「思い出なんか忘れたい」、一方で「思い出」がこの映画のテーマのひとつでもあります。
 この映画の編集を考えただけでも、私は眠れなくなりそうです。時系列に進んでいるようで、実はそうではないです。藤川監督は、鑑賞者に伝わるような編集をしているのです。編集には相当に時間を費やしていると感じました。
 私はこれまでのこの映画を5回鑑賞しました。また、昨日からきょう(11月26日)にかけて、2日間にわたり、藤川監督を談義しました。それでも、この映画を理解できたとは思えません。ますます深みにはまるような感覚です。

 藤川監督は「来年は全国各地で上映できることに力を注ぎます」と語りました。この映画こそ、1人でも多くの人に観てもらいたい作品です。

 

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