おきたまラジオNPOセンター・ひとりごとダイアリー

 

2023年12月23日(土曜日 夜遅く曇り

【クリスマス・フルート演奏会】
 “クリスマス・フルート演奏会 勝俣敬二とバッハの世界”が2023年12月23日、米沢市内(グランドホクヨウ・エクレシアホール)で開かれました。チラシの資料演奏者変更プログラムプログラムノートです。
 この演奏会は、勝俣さんが今年(2023年)特に力を入れて準備されてきたものです。私にも数ヶ月前には案内と協力依頼がありました。その理由の1つは、ソプラノの榎本さんとの7年越しの共演が実現したことです。勝俣さんは榎本さんについて、実力だけでなく、音楽に対する見識・視野の広さを高く評価しています。バッハをテーマに、勝俣さんにとっては、久しぶりのモダン木管フルートでの演奏ということも、力を入れた背景かもしれません。
 ちなみに、チラシに掲載されているフルートを演奏する勝俣さんの写真は、私が撮影したものが採用されました。この演奏会で私は記録ビデオの撮影を担当です。今年最後の大仕事になることから、私も気合いが入りました。

 ところが、直前になって、ハプニングです。チェンバロの小野さんが急病で出演できなくなったのです。それで急遽、笹原さんが代役としてチェンバロを演奏することになりました。新潟在住の笹原さんのチェンバロ演奏は、私もこれまで何度もお聴きしており、私も胸を撫で下ろしました。でも、現実には大変だったと思います。大雪により、笹原さんは大宮経由の新幹線で米沢入りしました。リハーサルは前日からでした。まさに短期間です。それを考えますと、本番での息のあった演奏には、頭が下がる思いです。
 また、大雪による影響もありました。会場には30人ほどの聴衆が集まりました。しかし、大雪でキャンセルした人が10人ほどいたそうです。30人の中には県外の人もいましたので、キャンセルされた人の中にも県外の方がいたのかもしれません。
 というわけで、少々困難な状況での演奏会になりました。
 下の写真左は会場のグランドホクヨウ、写真中は会場の中から見た窓越しの風景、写真右は会場の様子です。演奏中も雪は強く降り続きました。

  

 プログラムはバッハの作品です。バッハとは、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach)のことです。バロック音楽を代表するドイツの作曲家です。1685年3月生まれで、1750年7月28日に亡くなりました。カンタータから管弦楽曲など、数多くの作品を残しています。カンタータ(器楽伴奏付の声楽作品)にも、教会カンタータと世俗カンタータがあります。
 BWV(Bach-Werke-Verzeichnis)のあとの数字は、バッハ作品主題目録番号です。1013・1030は室内楽曲、1068は管弦楽曲、211と209はカンタータです。

 1曲目の“無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013”は、1717年〜1723年とされるケーテン時代の作品です。4つの楽章で構成されます。18世紀の無伴奏フルート独奏曲の最高傑作と言われるそうです。私には起伏に富んだ旋律から、人間の揺らぐ心境を表現しているように感じました。勝俣さんは「イエスが十字架を背負いながら倒れるシーン・・・よく似ています」と書いていますが、それが「揺らぐ心境」に通じているのかもしれません。複雑なテクニックを要する作品であり、この日の演奏会に情熱を注ぐ勝俣さんの思いを感じます。
 2曲目の“フルートとチェンバロのためのソナタ第1番 ロ短調 BWV1030”は、1723年〜1750年とされるライプツィヒ時代の1730年代(1935年頃)の作品とされています。ただ、勝俣さんは「初稿はケーテン宮廷奉職時代にト短調で書かれた」と説明しています。1723年、バッハはライプツィヒの聖トーマス教会のカントル「トーマスカントル」に就任しています。3つの楽章で構成されているように聴きました。チェンバロが加わることで、宮廷のような華やかさを感じますが、これも力作であり、勝俣さんの選曲の思いを感じます。
 3曲目の“アリア”は、管弦楽組曲の第3番、ニ短調 BWV 1068 の“序曲”に次ぐ曲で“G線上のアリア”としてお馴染みの作品です。管弦楽組曲(第1番から第4番)は1717年〜1723年とされるケーテン時代の作品です。クラシック音楽でも編曲があって、ドイツのヴァイオリニストであるアウグスト・ウィルヘルミがピアノ伴奏付きのヴァイオリン独奏に編曲したものです。この日はフルートとチェンバロによる演奏で、私にはヴァイオリンとは趣が異なる素朴さを感じました。
 4曲目でソプラノの榎本さんが加わります。曲目は、世俗カンタータの“そっと黙って、おしゃべりめされぬな”BWV 211 から2つの楽章です。曲名を“おしゃべりはやめて、お静かに :Schweigt stille, plaudert nicht)”と説明しているものもあります。1734年ですから、ライプツィヒ時代の作品です。コーヒー・カンタータとして知られます。榎本さんの歌唱は、コーヒー大好きなマリアの思いが、会場を包み込みます。コーヒーは私も毎日飲みますので、時代を超えて、バッハに親近感を持ちます。
 5曲目の“悲しみを知らぬ者”BWV 209 は、1729年または1934年の作品のようです。イタリア語の原題は“Non sa che sia dolore”で「彼はそれが痛みだということを知らない」という訳が出てきました。内容はプログラムノートを参照していただきたいですが、調性の違いが、楽曲に幅を持たせていることを感じます。それは、榎本さんの歌唱によって、より強く感じます。それは、苦しみと悲しみをテーマにした作品ですが、希望を感じさせるものでした。それは、今の盛会情勢にもつながるものとも感じました。
 アンコールは、コーヒー・カンタータの再演です。

 あらためて、勝俣さんが常に話される調性の特徴を、特に5曲目で感じることができました。音楽の奥深さを感じました。クラシック音楽でも、演奏者の思いによって、表情が違ってくることも感じました。
 演奏も素晴らしかったですが、集中して演奏に聴き入っていた聴衆の人たちも素晴らしかったです。音楽コンサートや映画鑑賞では、特に聴衆や鑑賞者のマナーの悪さで、残念な思いをした経験は少なくありません。
 この日の聴衆の人たちで咳をする人はほとんどおりませんでした。もちろん、演奏中の咳は、それぞれの体調・体質で、やむを得ないのでしょうが、私は演奏に集中していれば、咳をしている場合ではないと思っています。コンサートへ行くのであれば、その日に向けて、体調を整えることもマナーのひとつです。コンサートとは、演奏者だけがつくるものではないということです。

 大雪の中の演奏会でしたが、温かさというより熱気さえ感じた素晴らしいコンサートでした。声楽をまじえたという点で、私が観てきた範囲ですが、勝俣さんのコンサートは、さらに音楽表現の幅が広がり、私にとっては新鮮な感覚でもありました。勝俣さんの人脈の幅広さには、あらあめて敬服するばかりです。

 

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