おきたまラジオNPOセンター・ひとりごとダイアリー
2024年3月4日(月曜日)雪が降ったりやんだり 夜遅く曇り
【僕は眠るだけ】
山形市のシンガー・ソングライター、丹波恵子さんが新作CDを発表しました。タイトルは“僕は眠るだけ 〜ZAOレクイエム”です。
丹波恵子さんは昨年(2023年)5月3日、山形市・野草園でコンサートを開きました。そこで、ある人から「自分が書いた詩に曲を付けて歌ってほしい」とお願いされました。
ある人とは、佐藤勝雄さん(68歳)です。佐藤勝雄さんは、上山農業高校(現在の上山明新館高校)や東根工業高校(現在の村山産業高校)などの高等学校で1990年から22年にわたり、山岳部顧問を務められました。その間、佐藤勝雄さんの心を痛めたのは、山形県内の高校の山岳部で起きた事故でした。事故は、1963年(昭和38年)以降で、次のとおり発生しました。
*1963年(昭和38年)7月23日、置賜農業高校の山岳部の生徒1人(2年生)が朝日連邦で夏山合宿中、転落で亡くなりました。
*1967年(昭和42年)4月、山形市立商業高校の山岳部の生徒3人(1年生)が疲労のため凍死しました。
*1975年(昭和50年3月29日)、米沢商業高校の山岳部の生徒1人(2年生)が雪崩に巻き込まれ、亡くなりました。
*1985年(昭和60年12月30日)、山形東高校の山岳部の生徒1人(1年生)が雪洞事故で亡くなりました。
*1987年(昭和62年8月30日)、日大山形高校の山岳部の生徒1人が熱中症で亡くなりました。
*2002年(平成14年7月14日)、山形工業高校の山岳部の生徒1人が鶴岡市の母狩山(ほかりやま)で国体予選の縦走競技中に熱中症で亡くなりました。
特に佐藤勝雄さんが衝撃を受けたのは1985年に起こった山形東高校の事故でした。
県立山形東高校の山岳部は、1985年12月27日から3泊4日の日程で、蔵王スキー場にて冬山訓練を行いました。参加したのは生徒8人(1年生と2年生)です。引率は教員2人です。12月29日の夜、3つの雪洞とテント1張りで睡眠することにしました。生徒はそれぞれ2人ずつになって睡眠しました。顧問のうち1人は前日に下山、もう1人(30代)はその場所から500メートルほど離れた山小屋に宿泊しました。当時の記録によりますと、「この教諭は冬山では初心者だった」という記述もあります。
3つの雪洞のうち1つは、1年生2人が、アオモリトドマツの下に設置しました。斜面に、たこつぼ状に掘ったもので、高さ80cm、奥行き2メートルほどです。真夜中、アオモリトドマツの枝に積もった雪が、その雪洞に落下しました。雪洞は潰れました。2人のうち1人は助けを求めましたが、誰も来ませんでした。もう1人は潰れてから30分ほどで声がしなくなったそうです。
午前4時30分の起床で、2人が起きてこないため、6人の生徒が雪洞に行くと、潰れていることがわかりました。すぐに2人を掘り出しましたが、1人は窒息により亡くなりました。
佐藤勝雄さんは、このような山岳事故を風化させてはならない、そして亡くなった生徒の家族の気持ちに寄り添いたいという思いから、退職後の2019年に詩を作りました。「その詩に曲を付けて歌ってほしい」とお願いされたわけです。
丹波さんは、当初あまり乗り気ではありませんでした。内容があまりにも重すぎるからです。私にも「ある人から頼まれているものがあるのですが、ちょっとね〜・・・」と言っていました。
昨年(2023年)9月17日、丹波さんは再び山形市・野草園でコンサートを開きました。佐藤勝雄さんはそこで再び丹波さんにお願いしました。それも強くお願いしました。丹波さんは佐藤勝雄さんの強い思いに接し、依頼に応えることにしました。しかし、曲はなかなかひらめきませんでした。そこで、佐藤勝雄さんに案内され、蔵王の事故現場を訪れました。
 ようやく曲がひらめきました。その際、佐藤勝雄さんの詩も補作しました。2024年1月、Sさんの紹介で、山形市にあるハンダギケンでレコーディングです。曲間でヴァイオリンの演奏が入っているアレンジ・ヴァージョン、ギター弾き語りヴァージョン、カラオケ・ヴァージョンを収録しました。丹波さんいわく「何テイクか録り、良い感じになった」だそうです。これを東京のKさんに送り mix down 。ミックスダウンでヴァイオリンの演奏を入れてもらい、曲は完成。そして、CDとなって、発表・発売にいたりました。
佐藤勝雄さんは、完成したCDを、現在は県外に住む亡くなった山形東高校の生徒さんのご家族(親御さん)に贈りました。生徒さんのご家族は、事故に関して、自然災害か、人災かということで、納得のいかない思いを抱えていました。CDを聴いたご家族から「とても好い歌です」と返事があり、佐藤勝雄さんと丹波さんは安堵したとのことです。
ここで、“僕は眠るだけ 〜ZAOレクイエム”の1番の歌詞をご紹介します。
誰が想像できたか 君の動かぬ瞳を
元気でバスに 揺られたはずなのに なぜ 戻らないのか
悲しまないで たくましい友よ 僕はいつもあの時のまま
スキーや樹氷 楽しんだのさ だから たくましい友よ 悲しまないで
僕は眠るだけ ただ眠るだけ アオモリトドマツの傍らに
僕は眠るだけ そっと眠るだけ だから 悲しまないで
2番は妹へ、3番は父母へ「悲しまないで」と綴ります。
エフエムNCV・おきたまGO!で放送の“丹波恵子の扉を開いてハイタッチ!”では、3月4日の初回放送で“僕は眠るだけ 〜ZAOレクイエム”がアレンジ・ヴァージョンで初オンエアされました。丹波さんらしいメロディの展開ですが、名曲です。
CDは、米沢市の駅前にある名曲堂(右の写真)、八文字屋北店で発売中です。
丹波さんや佐藤勝雄さんに問い合わせても購入できます。1枚1500円です。
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