だがしや楽校・ひとりごとダイアリー
親子撮影会&だがしや楽校
主催:山形防災教育センター
協力:だがしや楽校だがしや倶楽部・山形県内陸事務局
日時:2013年3月16日 10:00〜15:00
場所:南陽市健康長寿センター(山形県南陽市赤湯215-2)
2013年3月16日(土曜日)晴れ 午後3時すぎから曇り時々雨 薄日差す 夜曇り一時みぞれ
【親子撮影会&だがしや楽校】
“親子撮影会&だがしや楽校”(主催:山形防災教育センター 協力:だがしや楽校だがしや倶楽部・山形県内陸事務局)が南陽市内(南陽市健康長寿センター)にて開かれました。
小山一芳(おやまかずよし)さん(55歳)は、岩手県一関市出身のフリーカメラマンです。現在は、東京都港区白金台に事務所を構え、雑誌や広告などの写真を手掛けています。
『311』が起こります。故郷・岩手の様子をテレビで観た小山さんは「写真家として何ができるのか」と考え込みます。即、被災地に飛びます。そして、現地で顔写真の撮影を依頼されたことから「自分にもできることがあるんだ」と気付き、被災地で「人間」を撮影する活動を始めたのです。小山さんがカメラを向けますと、みんな笑顔になります。優しい表情になります。それは、前向きに生きようという思いが表情に浮かび上がった瞬間でした。それは、その人にとって、その瞬間の記録でもあります。
小山さんは、『明日への笑顔』と題して、撮影の活動を始めました。活動では、仮設住宅や集会所などで、撮影会を開催しました。
これまで撮影した写真は、数万点にも及びます。撮影した写真は、その場でプリントし、差し上げています。だから、収支的には、けっして楽ではありません。しかし、小山さんは、この取り組みを5年・10年は継続する、と言います。
小山さんは、撮影した写真を展示する活動も始めました。『マゲナイゾ!...と笑顔で生きる人たち』と題して写真展です。これは「被災した人たちを忘れてはならない」という思いで開いているものです。写真展は、岩手県を中心に全国各地で開催されています。山形県でも昨年(2012年)11月24日~12月9日に山形市で開催されたほか、寒河江市の“最上川ふるさと総合公園”でも開催されています。
主催者代表の遠藤さんは、防災や被災地・避難者支援活動に携わっています。“復興ボランティア支援センターやまがた”のスタッフとして活動している傍ら、地元・米沢を中心に“山形防災教育センター”として避難者支援に力を注いでいます。
遠藤さんは、岩手県陸前高田市で小山さんと出会います。そこで遠藤さんが観たのは、小山さんの撮影光景です。それは、これまで観たこともない撮影光景でした。話術によって、笑顔に導く小山さんの撮影手腕に対して、遠藤さんは、感動すると同時に、強く興味関心を持ったのです。
遠藤さんは、小山さんに「山形県での撮影会開催」を提案します。山形県には、数多くの避難者が生活しています。遠藤さんは「その人たちも、今の記録を写真に残したい、という思いがあるはず」と考えたのです。
こうして、小山さんにとって、山形県で初めての撮影会が実現することになりました。
小山さんの撮影自体、とっても楽しいものですが、「せっかく来ていただく人たちにもっと楽しんでもらいたい」「撮影までの時間も楽しいものにしたい」と考えた遠藤さんは、私に「“だがしや楽校”を開いていただけませんか」と提案しました。
私は提案をお受けし、まず“楽描きだがしや楽校”のRさんに相談しました。Rさんは快く引き受けてくださいました。Rさんいわく「この撮影会に関心がありましたので、参加したいと思っていました」とのことでした。
南陽市では“志立だがしや楽校”が開催されたことをきっかけに、頻繁に“だがしや楽校”が開かれています。最近では、2月17日開催の“えくぼプラザまつり”でも“だがしや楽校”が開かれています。そこで、私は“志立だがしや楽校”開催に尽力され、その後も“だがしや楽校”のために力を注いでいる南陽市社会教育課の嶋貫さんにも相談しました。結果、いつも親子向けの工作でおみせを出してくださる人たち(お子さん含めて5名)に協力していただくことになりました。
主催者スタッフは、プリント係として新潟から来られたという男性、受付会場内案内係として女性1名が、ボランティアスタッフとしての参加です。
小山さんを含めますと、スタッフは、総勢11名です。
また、遠藤さんによりますと、事前に申し込みがあったのは32組でした。
私が午前9時30分前に会場へ着きますと、小山さん・遠藤さんら4名が準備に取り掛かっていました。撮影場所の設置は、かなり大がかりです。写真スタジオのようにするからです。加えて、撮影した写真を処理するためのパソコン・映写機・スクリーン、及びプリンターも設置します。
遠藤さんは私に小山さんを紹介してくださいました。小山さんは私に「自分は声が大きいです。何か『おかしいな〜』と思ったら、遠慮なく言ってください」と話されました。私は小山さんに好感を持ちました。
写真撮影中の小山さんの声は確かに大きいです。でも、実際には、そんなに大きいとは思いませんでした。“だがしや楽校”をやるにおいて、邪魔なるような大きさの声ではありませんし、逆に楽しい雰囲気を醸し出していました。
写真撮影中の小山さんの言葉は荒っぽいです。これから撮影を始める人には、いきなり「やるぞ〜!」「いくぞ〜!」といった調子です。命令口調です。撮影中は「気合いを入れて!」「飛んで!」「くっついて!」などの言葉が次々に炸裂します。また、妊娠中の女性の人には、妊娠していることがわかるポーズをさせ「ニンシ〜ン!」カシャ!。
私は、よく聞くことがある「あの人は、口は悪いが、本当は良い人なんです」というセリフには同感できません。本当に良い人なら、口から発する言葉だって、悪くはならないはずだからです。ラジオを中心にした放送関係にも関わったことがある私としては、アナウンサーが講演で語る「言葉遣い」の話は、共感して聴きます。
そういう私ですが、小山さんだけは例外でした。撮影中の口調が気にならなかったのです。それは、撮影されている人たちの笑顔を見れば、納得です。小山さんの話術には、ただただ感心するばかりです。楽しさ炸裂です。
小山さん、なんと昨夜(3月15日)は川崎市で活動していました。これまたビックリです。
“親子撮影会&だがしや楽校”は午前10時スタートでしたが、撮影スタジオ設置に時間がかかりましたので、少し遅れてのスタートでした。米沢市で生活しているUさんのおかあさんとお子さんが来られました。撮影の準備ができるまで、Rさんのおみせで遊んでもらいました。お子さん、きょうはとてもご機嫌で、私の顔を見ては「アハハ」と笑っていました。
やがて、撮影の準備ができました。それでは、撮影会の様子からご紹介しましょう。
おかあさんとお子さんで撮影に臨んだ人もいれば、家族で写真に収まった人たちもいました。小山さんは、いろんな角度から、そしていろんなポーズをしてもらいながら、撮影していました。例えば、「ジャンプしろ〜。ジャンプ!」と言ったり、上から撮影する人には「鼻の穴が見えるぞ〜!」と言いながら、撮影します。
小山さんは寝っ転がって撮影することもありました。撮影のためなら何でもありです。
小山さんは、「スタッフも撮影だ〜!」と言います。主催の遠藤さんが撮影に臨みます。「せ〜の、ジャンプ!」カシャ!。
小山さんは、子どもたちを遊ぶことも忘れません。「野球、得意なんだぞ」と言いながら、子どもたちとミニキャッチボールです。
きょうの“親子撮影会”は、避難者を対象にしたイベントですが、飛び入りもありました。きょうは山形市内の大学で卒業式がありました。卒業生のひとり・Kさんは、避難者支援にも携わっていました。遠藤さんとも交流がありました。私も“復興ボランティア支援センターやまがた”でお会いしています。そんな関係で、Kさんは卒業式後、ご両親といっしょに卒業式場から会場に来られ、小山さんのカメラに収まりました。
撮影した写真はパソコンを通してスクリーンに映します。そして、気に入った写真をプリントします。パソコン操作は遠藤さんと男性スタッフです。
一般の写真館では、何度も撮影しても、贈られるのは1枚だけです。しかし、きょうは記録媒体を通して、撮影した写真すべてが贈られました。それだけでも皆さんから喜ばれました。
“だがしや楽校”の様子をご紹介します。
▼スライム
“楽描きだがしや楽校”Rさんのおみせは、スライムです。小さいお子さんは、おかあさん・おとうさんに手伝ってもらいながら、スライムを作りました。出来たスライムをプヨプヨしながら遊ぶお子さんがいたかと思うと、Rさんからスライムの作り方を熱心に聞くおかあさんもいて、楽しさいっぱいでした。
▼フェストでケーキづくり
南陽市の“だがしや楽校”仲間の人たちが出したおみせは、フェルトを切ったり丸めたりしてケーキの形をつくり、ビーズを付けてデコレーションします。特にロールケーキが注目です。意外にロールケーキは、私も初めてみました。こちらも大人気で、準備した材料が途中で無くなってしまうほどでした。
午前10時にスタートした“親子撮影会&だがしや楽校”は、あまりの楽しさに、アッという間にお終いの午後3時を迎えてしまいました。
撮影は、事前に申し込みがあった32組以外にも、飛び入りの親子にも行いました。さらには、先にご紹介したKさんとご両親、寒河江市のふるさと公園管理運営企業体の関係者、それに、遠藤さんをはじめとするスタッフの人たちも撮影に臨みました。
Rさんと私の“だがしや楽校”組は、すべての人たちの撮影が終わった後に撮影です。「ノケゾリー!」カシャ!、片手をあげて「ガッツポーズ!」カシャ!。
午前中は、米沢など置賜地域に住んでいる人たちが中心でした。水曜日の“お茶会”や木曜日の“ままカフェサロン”に参加しているおかあさんとお子さんもいました。
ここで嬉しくなる風景を見ることができました。
米沢に住むおかあさんと南陽市に住むおかあさんが話を始めました。初対面です。話している内に、2人とも自宅は同じ福島市の、しかも近いところであることがわかりました。おかあさん同士がつながった瞬間です。早速連絡先を交換していました。
その南陽市に住むおかあさんは、米沢に住むおかあさんと私(山口)が親しくしている様子を見ながら、また私が“お茶会”や“ままカフェサロン”に誘ったところ、「友だちのようですね。そんな雰囲気ならぜひ参加したいです」と話されました。
きょうの“親子撮影会&だがしや楽校”では、運営に課題もありました。例えば、小山さんが撮影しても、パソコンでの確認やプリントで時間がかかり、お待たせしてしまう場面がありました。
しかし、撮影に臨んだ人たちは、みなさん大満足の顔をされていました。撮影中の楽しさはもちろんですが、なんと言っても、写真が映し出された時のニッコリした表情は最高です。
よく「結果オーライ」と言いますが、きょうの“親子撮影会&だがしや楽校”は、まさにその通りでした。
それでも小山さんにとっては、まだ物足りない様子です。撮影が終わるたびに「また、やるからね!」と声をかけていました。本当なら、もっと時間をかけて撮影したかったのです。
午前中は大にぎわい、午後はまったりになったことも、1日を通して振り返りますと、良かったです。午前中の大にぎわいは、撮影のスタートが遅くなったこともあってのことで、私は内心ハラハラしました。でも、よく振り返って考えますと、“だがしや楽校”で遊ぶことができ、そこに交流が生まれました。また、小山さんの写真撮影の様子もあらかじめ見ることができましたので、楽しさ倍増につながりました。“フェストでケーキづくり”のおみせを出した南陽市の人たちは「こんなに凄いとは思いませんでした」と感想を語られました。
午後のまったり状態では、私もゆっくり写真撮影の様子を拝見することができました。また、じっくり交流することもできました。“だがしや楽校”は、交流することがひとつの目的ですので、いろんな雰囲気の中で交流することができて、とても良かったと思います。
午後は、山形市に住む人たちが中心でした。Rさんとの交流がある人も多かったです。私が昨年9月29日の“だがしや楽校芋煮会”(山形市馬見ヶ崎河川敷)でお会いしたおかあさんもいて、なごやかな雰囲気が続きます。
小山さん、そのおかあさんたちに「まだ、やるぞ。その時は、あなた方がボランティアだぞ!」と言います。おかあさんたちも「わかりました」と応じます。ボランティアとは、撮影した写真のパソコンでの処理やプリント作業のことです。小山さんから見ますと、この作業のボランティアがもう少しいれば、運営はもっとスムーズになる、というわけです。
それにしても、気さくに「次はあなた方がボランティアだぞ!」と声をかける小山さんは凄いです。ここに避難者支援のひとつの原点を観ることができます。それに「わかりました」と応じるおかあさんたちも凄いです。
午後3時をすぎて、撤収作業が始まりました。私たちはテーブルのお片付けをしました。その様子を見ていたお子さんたちが、私に近づき、いっしょになって、テーブルの移動を手伝いました。私は「こうやって、こうやって」を繰り返しながら移動しますと、子どもたちも「こうやって」と言いながら移動を手伝いました。いつの間にか、私は子どもたちとお友だちになりました。
それは、Rさんも同じです。Rさんも子どもたちと(本人の意思は違うかもしれませんが、私の目には)真剣になって遊んでいました。
ここでまた、嬉しいことがありました。子どもたちもそうですが、おかあさんたちも片付け・撤収作業を手伝われたのです。それも最後まで・・・。
このように、楽しいこと、嬉しくなることがたくさんあった“親子撮影会&だがしや楽校”でした。
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