だがしや楽校・ひとりごとダイアリー

 

子どもを通じた大学生の交流事業

山王こどもバザール大学交流会

 

主催:やまがたこどもアトリエ、特定非営利活動法人公益のふるさと創り鶴岡

 

2013年10月19日:山王こどもバザール&大学生交流会・1日目

2013年10月20日:山王こどもバザール&大学生交流会・2日目

 

2013年10月19日(土曜日)庄内地方午後からの天気:晴れ

【山王こどもバザール&大学生交流会・1日目】
 “山王こどもバザール&大学生交流会”が開かれました。きょう(10月19日)は2日間開催の1日目です。主催者である“やまがたこどもアトリエ”の吉田さん・結城さんから発表された主旨をご紹介します。

 全国各地の大学では「子どもの教育」をテーマに多様な試みが行われています。そういった試みの中で 、大学生の専門性を活かして子ども(幼児・小学生)と関わることのできる仕組みして注目されているのが“だがしや楽校”です。
 今回の“山王こどもバザール・大学生交流会”では、普段から“だがしや楽校”の活動に取り組んいる大学生を鶴岡に招き、山王ナイトバザールでの実践発表や東北公益文科大学で活動発表を行います。
 大学同士が情報同士が情報交換できる場を提供することで、活動のさらなる活性化と商店街の賑わいづくりを図ります。

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 “だがしや楽校”では、全国各地で、様々な思い、様々な方法・やり方(みんなが集う場としての“だがしや楽校”から、社会教育を学ぶ場としての“だがしや楽校”など千差万別)で取り組まれている“だがしや楽校”の仲間たちが一堂に会しての“だがしや楽校・全国寄り合い”を開催してきました。
 また、2011年10月には、“だがしや楽校”に関わる全国の子どもたちが一堂に会しての“だがしや楽校・子どもサミット”を山形県鶴岡市などで開催しました。

 ところで、“だがしや楽校”では大学生の存在も忘れてはなりません。
 東北芸術工科大学の学生さんは、毎年のように“だがしや楽校”発祥の地とされる山形市・みなみ公園で“だがしや楽校”を開いているほか、山形県内各地で“だがしや楽校”を開いています。毎回“だがしや楽校”を開いている鶴岡市の“山王ナイトバザール”には、山形大学(農学部)の学生さんがおみせを出すなどしています。宇都宮大学も以前から“だがしや楽校”と深い関わりがあります。
 主旨にもありますが、“だがしや楽校”のみならず、子どもたちとの関わりをテーマにしている大学は、山形県内にもいくつかあります。その学生さんたちが時に“だがしや楽校”と関わっているケースも見られます。
 また、最近全国各地で見られるようになった“子どものまち”という取り組みで、子どもたちと関わる活動を行っている大学もあります。私が先日(10月5日)訪問した宮城県石巻市で開かれていた“子どものまち・いしのまき 〜子どもが主役の子どものまち〜”もそのひとつです。これには、山形大学地域教育文化学部が関わっております。

 こうした背景があって、主催者は“だがしや楽校”として大学生が一堂に会する取り組みを企画しました。
 主催したのは“やまがたこどもアトリエ”の吉田祐子さん・結城ななせさんです。吉田さん・結城さんとも東北芸術工科大学に在学していた当時から、熱意をもって“だがしや楽校”に取り組み、卒業した現在も、鶴岡市を拠点に“だがしや楽校”に関わりながら活動を続けています。
 鶴岡市では毎年5月〜10月に毎月1回開催される“山王ナイトバザール”にて毎回“だがしや楽校”が開かれるなど、山形県内でも“だがしや楽校”活動が最も活発な地域のひとつです。その中心的役割を担っているのはNPO法人公益のふるさと創り鶴岡です。
 吉田さんは、2012年4月から鶴岡に拠点を移し、公益のふるさと創り鶴岡のスタッフとして活動しながら、“だがしや楽校”に力を注いできました。結城さんは吉田さんの後を引き継いで、2013年4月から、同じく鶴岡に拠点を移し、公益のふるさと創り鶴岡のスタッフとして活動しています。
 吉田さんは1年間の鶴岡での活動を通して、子どもたちと関わる活動を「さらにステップアップしたい」と考えます。そして、子どもたちと自由に創造できる場を探していました。
 そんな時、“楽しい庄内をみんなでつくってみない会”という任意団体が、自分たちが管理している旧羽黒西部児童館の利活用について検討しているという情報が公益のふるさと創り鶴岡を通じ入りました。旧羽黒西部児童館は長く閉鎖されていましたが、鶴岡の市街地からは比較的近いところにあります。
 吉田さんは、旧羽黒西部児童館を拠点に活動することを決め、鶴岡で活動することになった結城さんと共に、「子どもたちに創造的で豊かな放課後の居場所を提供すること」をコンセプトとして、2013年3月オープンしたのが“やまがたこどもアトリエ”です。
 “やまがたこどもアトリエ”は、原則として毎週土・日の午後オープンです。“やまがたこどもアトリエ”では“だがしや楽校”だけでなく、地元の人たち(職人)を先生として招き、子どもたちに様々な経験をしてもらう“アフタースクール”、親子で参加できるプログラムなどを行ってきました。大きな紙に世界地図を描くなど、ものづくりやアート体験のプログラムもありました。
 私たち大人は、大人の論理によって、子どもたちが持っている自由な創造力を摘み取っているのではないか、と私(山口)は思うことがあります。
 “やまがたこどもアトリエ”は、子どもたちが持ってな創造力を大切にし、育んでいます。それは、お互いに、様々な生き方を認め合い、大切にすることにつながります。

 今回の“山王こどもバザール&大学生交流会”は、吉田さん・結城さんの、そうした思いが詰まった取り組みという見方ができます。
 ご紹介してきましたが、これまで“だがしや楽校”をテーマに大学生が集う取り組みはありませんでした。今回が初めての試みです。
 私(山口)が思うに、学生さんが子どもたちと関わることは、子どもたちへの教育という視点というよりは、学生さん自身の生き方・考え方を学び・育むことに、最も大きな意味があると感じております。そういう意味でも、今回の取り組みは、意義深いです。

 なお、旧羽黒西部児童館での“やまがたこどもアトリエ”は今月(2013年10月)までです。旧羽黒西部児童館が解体されるからです。跡地には介護施設が建設されるようです。吉田さん・結城さんは、これをひとつのステップとし、新たな展開につなげようとしています。

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 “山王こどもバザール&大学生交流会”の参加者です。

◎宇都宮大学・廣瀬隆人研究室の学生さん・6名
 宇都宮大学は佐々木英和さんが“だがしや楽校”と以前から関わりを持っていますが、山形県との関わりが深く、私も何度かお世話になっている廣瀬隆人さんが“だがしや楽校”に取り組んでいます。1週間前の10月12日には、宇都宮市のオリオン通りで開催された“宮っこフェスタ”でも“だがしや楽校”を開きました。

◎山形大学地域教育文化学部・佐藤慎也研究室の学生さん・5名
 私が石巻市を訪問した10月5日に開かれていた“子どものまち・いしのまき 〜子どもが主役の子どものまち〜”で遊びのおみせを出しました。
 “だがしや楽校”としての参加は、きょうが初めてです。10月5日の“子どものまち・いしのまき”で公益のふるさと創り鶴岡が“だがしや楽校”を開いていたのは、佐藤慎也さんのコーディネートによるものです。その佐藤慎也さんは“冒険遊び場”(プレイパーク)に於いても造詣が深いです。

◎東北芸術工科大学・片桐隆嗣研修室の学生さん・14名
 今年の“だがしや楽校@みなみ公園”メンバーが中心です。

◎鶴岡側のスタッフ
 公益のふるさと創り鶴岡・常務理事の阿部等さんをリーダーに公益のふるさと創り鶴岡のスタッフらがサポートしました。また、山形大学農学部の学生さんが会場準備などで協力しました。
 私は公益のふるさと創り鶴岡からの依頼で、取材・記録を担当しました。

 ところで、吉田さんですが、どうしても抜けられない所用が生じたため、参加できない事態となりました。とても残念です。それで結城さんが全体のコーディネーターを務めました。

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 1日目のプログラムは実践です。
 今年(2013年)最後の山王ナイトバザールで“だがしや楽校”を開きます。
 それで、3つの大学が“だがしや楽校”のおみせを出しますので、いつもの山王ナイトバザールでは飲食ブースが立ち並ぶ金融機関の駐車場で行うことにしました。
 さらに、この場所を“山王こどもバザール”と称して、子どもたちが集う場であることを明確に示しました。これも初めての試みです。

 それでは1日目の様子をご紹介します。

 私(山口)が鶴岡市に着いたのは午後2時すぎです。プログラムのスタートは午後4時です。まだ時間はありますが、会場を下見することにしました。
 会場では、結城さんと山形大学農学部の学生さんたちが“山王こどもバザール”を飾る風船を膨らませているところでした。たくさんの風船ですので、ちょっと大変そうです。こうした協力があっての“山王こどもバザール”なのです。

 予定では午後3時30分に宇都宮大学・山形大学・東北芸術工科大学の学生さんたちと3人の先生方を乗せたバスが到着することになっていました。しかし、ちょっとした行き違いで、少し遅れました。それで、宿泊先で待機していた私が近くの駐車場まで迎えにいきました。
 駐車場に着きますと、すでにバスは到着しており、私は皆さんを宿泊先まで案内しました。こうして私は案内役を務めていたのであります。それは宿泊先でのチェックインをはじめ、2日間続くことになりました。

 午後4時30分頃、予定よりやや遅れて、会場に着きました。予定では、ここで学生さんと鶴岡側のスタッフ及び“やまがたこどもアトリエ”の子どもたちとの顔合わせ・自己紹介となっていましたが、それは無く、3つの大学の学生さんたちで、おみせの配置を考えました。
 私個人的には、顔合わせ・自己紹介をきちんとやってほしかった、という思いがありました。なぜなら、私の関わり・役割を学生さんたちに紹介したかったからです。そうでなくても、ケジメは付けるべきと考えます。

 配置が決まり、準備開始です。

↑奥側から見た会場です。正面奥が鶴岡郵便局です。右側(北東側)が宇都宮大学と山形大学(道路側)のおみせで、左側(南西側)が東北芸術工科大学のおみせです。

 

↑宇都宮大学の準備風景です。写真右は学生さん同士でのお試しです。“とちぎさがし”では新聞紙を入れすぎ、実際にやってみて、探しにくいことがわかり、新聞紙を少なくする場面もありました。

 

↑山形大学の準備風景です。ビーズアクセサリーや竹の楽器(写真右の右側テーブル)が準備されています。
 この内、竹の楽器は、“子どものまち・いしのまき”で子どもたちが作ったものを持ってきました。竹の中に石が入っています。子どもたちには、リボンなど好きなように付けてもらいます。そして、振って音を出して遊びます。これは、“子どものまち・いしのまき”にて、地元の大人の方からの提案で作りました。

 

↑東北芸術工科大学の準備風景です。写真右のようにミーティングする風景もみられました。

 

↑“やまがたこどもアトリエ”の子どもたちは駄菓子屋さんの準備です。駄菓子を入れる箱をつくったり、値札を作ったりと大忙しです。

 準備をしている間に、上空は真っ暗です。“山王ナイトバザール”は午後6時からですが、すでに多くの人が集まっています。今年最後の“山王ナイトバザール”もにぎわいそうです。
 “山王こどもバザール”にも待ちきれない子どもたちが集まってきました。

 はじめに“山王ナイトバザール”の模様を少しだけご紹介します。
 “山王ナイトバザール”は今年で20周年です。しかも今回が第120回“山王ナイトバザール”です。とにかく長く続いています。

 

↑いつもは“だがしや楽校”が開かれている不動産屋さん前では子どもたちによる太鼓演奏が披露されていました。太鼓の音は200メートル以上ある山王商店街の端まで響いていました。

 

↑山王商店街の南端に位置するイチローヂ商店(旧菅原市郎治商店)ではジャズの演奏です。シックでおしゃれな雰囲気に包まれています。

 

↑“山王こどもバザール”の一角では、広域連携でつながりのある新潟県村上市からのお店も開かれています。「今年最後の“山王ナイトバザール”ということで出店に来ました」とお話してくださいました。
 酒造屋さんの「和水蔵(なごみぐら)」手ぬぐい、指付きソックス、ぜんきゅうタオル、ガーゼの手ぬぐい、水引などが並んでいます。加茂水族館オリジナル手ぬぐいもあります。

 それでは“山王こどもバザール”の模様をご紹介します。

 入口には風船で飾られたゲートが設けられました。これは大成功です。見事に雰囲気を醸し出していました。きょうの山王ナイトバザールの中で最後までにぎわっていたのが“山王こどもバザール”でした。

 宇都宮大学・学生さんのおみせです。

▼とちぎ釣り

  

 中にあるのは栃木県のゆるキャラや栃木県の名産品が書いてあるものです。写真は栃木市の“グレッピー”というキャラです。ブドウをもじっています。それを魚釣りのように釣ります。釣ったら、それを開きます。中にクイズが書いてあります。そのクイズに答えて正解ですと、豪華賞品がもらえます。

 

 栃木県のことを知ってもらうために考えた遊びです。クイズは学生さんたちが作りましたが、私のインタビューに「クイズは簡単に出来ました。キャラクターの名前を3択クイズにしました」と答えてくださいました。
 クイズの中には、子どもたちには難しい問題もありましたが、それが逆に親子の協力を引き出していましたので良かったと思います。

▼とちぎさがし

 

 宝探しです。宝は栃木県のゆるキャラ・キャラクターに例え、子どもに見つけてもらいます。見つけますと、裏にキャラクターの名前が書いていますので、おぼえてもらえるのかな、というものです。これも栃木のことを知ってもらいたいという遊びです。
 私のインタビューに「もともとは新聞プールとして宝探しをしたのですが、今回は鶴岡での“だがしや楽校”ですので、“とちぎさがし”に応用しました。地元(宇都宮市)では子どもたちに人気の遊びで、鶴岡の子どもたちにも気に入ってもらえれば、と思っています。昨年からずっと続いている遊びです」と答えてくださいました。

▼どんぐりコマ共和国

 

 秋の“だがしや楽校”ですので、子どもたちに木の実・どんぐりで遊んでもらいたいと思い、どんぐりでコマを作ってもらうおみせにしました。爪楊枝をさしたどんぐりに、シールやペンでデコレーションしてもらい、オリジナルのコマを作り、そのコマを回す遊びです。
 私のインタビューに「ドングリは、大学内で拾い、蒸しました。『作る』と『遊ぶ』を同時にできるのかなということで考えた遊びです」と答えてくださいました。

 山形大学地域教育文化学部・学生さんのおみせです。

▼ビーズアクセサリー

 

 自分たけのビーズアクセサリーを作ります。“子どものまち・いしのまき”で「雑貨屋さんでビーズアクセサリーを作りたい」というお子さんがいました。きょうはその時に使ったビーズを持ってきました。
 おみせでは女のお子さんを中心に多くの子どもたちが遊びました。長い時間でも飽きることなく取り組んでいるお子さんもいました。

▼チョコレートこうじょう

 

 仙台の“子どものまち”で開かれていたものを、佐藤慎也さんのコーディネートで“子どものまち・いしのまき”でもやってみたものです。そうしたら、子どもたちに人気だったそうです。

 

 普通1個20円で売っているチョコレートの箱を自分たちで作ることで地域通貨をもらい、その地域通貨で“子どものまち”駄菓子屋さんで駄菓子を買うことができます。鶴岡ではきょうが初めてですが、佐藤さんは阿部さんにも紹介しています。鶴岡“だがしや楽校”のバリエーションが増えそうです。

 東北芸術工科大学・学生さんのお店です。

▼おふとん虫

 

 手のひらサイズに綿を取り、それに自分の好きな色の毛糸をぐるぐる巻いて、目を付けたり、モールを使って“おふとん虫”を作ります。“おふとん虫”の由来は、おふとんの中の綿のフカフカしたイメージからです。可愛く、首にかけたり、手に付けたりできる“おふとん虫”を作ります。“おふとん虫”に2つの輪っかを通しますと、ブンブンゴマにもなります。五感の内、手の触感を味わう遊びです。
 学生さん自身が綿のフカフカした感触を楽しんでいるというおみせです。おみせ番の人が楽しいおみせは、みんなが楽しいおみせです。

▼お月さまステッキ

 

 「ナイトバザールということで、星や月をテーマにしたかったです」という思いからのおみせです。「でも、宇宙を作るのが難しく、どうしようかと考えた時、平面だけど、回したらお月さまになる!!ということで、お月さまステッキになりました」と答える学生さん。
 割り箸の柄に付けたダンボールに、キラキラのモール、キラキラのテープを付けるだけで惑星やお月さまが作れるという屋台です。奇想天外なおみせと言えるかもしれません。学生さんのアイディア力に敬服します。

▼こんばんは屋台

 

 「こ」「ん」「ば」「ん」「は」の文字に切ってある紙に、子どもたちがきょうあった1日の出来事を絵日記のように書いてもらいます。書き埋まった紙を貼り、「こんばんは」にするという屋台です。きょう1日を振り返り、子どもたち同士でおしゃべりしながら書いてもらいます。たくさんおしゃべりができる屋台です。
 私のインタビューに「ナイトバザール(夜)ということでしたので、普段「こんばんは」という挨拶に子どもたちは馴染みがないのではないかと考え、「こんばんは」を使って何かできないかと思い、考えたおみせです」と答えてくださいました。


▼つくってかげえ

 

 お馴染み影絵の遊びです。スクリーンや塀に光をあて、影絵をします。
 お馴染みと言いましたが、私のインタビューに学生さんは「今のお子さん、影絵で遊ぶことはないと思いました。それで私たちが影絵での遊び方を教えながら、いっしょに遊びます。あとは子どもたちに自由に遊んでもらいます。文房具を使っての影絵も紹介します。ハサミは目のように見えます。それとほかのものとを組み合わせ、何かを作ります。日常のもので、子どもたちに新たに影絵を作ってもらいます。新しく出来たら、紙に書いてもらい、影絵を増やしていきます。スクリーンも背景を変えながらやります」と答えてくださいました。

 

 影絵も、ナイトバザール(夜)ということで、アイディアが浮かんだ遊びです。これこそが、子どもたちの発想力全開の遊びです。

 ここまでが3つの大学の学生さんによるおみせです。

▼紙芝居

 

 創作紙芝居劇団“だだちゃまめ”の中村恵二さんによる紙芝居は、鶴岡の“だがしや楽校”ではすっかりお馴染みです。きょうも、紙芝居ジャンケン、紙芝居ナゾナゾ、小話紙芝居、創作桃太郎など、おもしろさ満点の紙芝居が繰り広げられました。 

 

 紙芝居の合間に中村さんと談義しました。
 中村さんが師事したのは安野侑志さん(ヤッサン)です。紙芝居「ヤッサン一座」を率いて全国を回っていた人です。私も実際に拝見したことがあります。ヤッサンの紙芝居は本物です。自転車の荷台で紙芝居をするからです。子どもたちとのやり取りは軽妙そのものです。一方で迫力もあります。グイグイ引き込まれます。
 ヤッサンは山形県鶴岡市(旧櫛引町)出身で、大阪を拠点に活動していました。
 そのヤッサンが昨年(2013年)8月急逝されました。69歳です。残念というしかありません。
 私が鶴岡で拝見したヤッサンの口演に同行していたのが長男のだんまるさんです。そのだんまるさんが、ヤッサンの故郷・鶴岡で錦を飾りました。今年(2013年)9月、2代目座長の襲名披露口演を行ったのです。この口演は、鶴岡など山形県内各地で催されました。ニュースにもなったほどです。
 私は中村さんに「元々だんまるさんは、ヤッサンを継ぐことにしていたのですか?」と尋ねました。中村さんは「元々継ぐ意志はなかったようですが、ヤッサンが急逝されたことで、継ぐことを決意しました。口演を拝見しましたが、なかなか上手だったです」と話してくださいました。
 

▼駄菓子屋

 

 “やまがたこどもアトリエ”の子どもたちがおみせ番をしてい駄菓子屋さんです。駄菓子屋さんはこどもテント(モンゴルゲル)の中にあります。“山王こどもバザール”入口脇に設置されましたので、シンボル的存在になりました。

 

 中では結城さんのサポートで、子どもたちが笑顔で駄菓子屋さんを務めていました。次々にお客さんがやってきて、ちょっと疲れ気味になるほど大忙しでした。

 

 日中は20℃を超えた鶴岡でしたが、夜になって少しずつ気温が下がってきました。それで肌寒さが心配でした。
 また、せっかく遠路遙々宇都宮大学から来られましたので、雨が降ったり、寒くなったりして、寂しい“山王こどもバザール”になったら・・・とも心配もしました。
 しかし、その心配は無用でした。雨の心配はなく、大勢の子どもたちが集ったことで熱気あふれる“山王こどもバザール”になり、寒さはまったく感じませんでした。
 いつもは飲食ブースが立ち並んでいますので、地元の方の中には、ちょっと戸惑った人もいましたが、風船で飾られたゲートや駄菓子屋さんのこどもテントが雰囲気づくりに貢献し、いつまでも大にぎわいでした。

 あまりの大にぎわいで、学生さんたちが“山王ナイトバザール”を見学する時間が無かったり、ほかのおみせで遊ぶことができなかったのは残念でしたが、学生さんたちは多くの子どもたちと遊ぶことができました。子どもたちから得るものがたくさんあったことでしょう。きっと、これからの活動につながったと思います。


2013年10月20日(日曜日)庄内地方の天気:

【山王こどもバザール&大学生交流会・2日目】
 “子どもを通じた大学生の交流事業 〜 山王こどもバザール&大学生交流会”の2日目は、場所を酒田市の東北公益文科大学(公益ホール)に移し、各大学からの活動発表とグループによる意見交換を行いました。
 これは“公益起業フォーラム ~まちづくり編~ 子どもを通じたまちづくり活動”(主催:公益のふるさと協働フォーラム運営会議)として開催したものです。

 結城さんの進行で午前10時から始まった各大学からの活動発表には、東北公益文科大学関係者など庄内地域の人たちも聴講しました。
 なお、廣瀬隆人さん(宇都宮大学教授)・片桐隆嗣さん(東北芸術工科大学教授)のご配慮で、開会前に、学生さんたちに私を紹介する時間を設けてくださいました。
 なお、おことわりですが、教授のお三方については、“だがしや楽校”の主旨から、このレポートでは「さん」と呼ぶことにしました。

 それでは、3つの大学の学生さんによる発表について、その概要をご紹介します。


▼宇都宮大学
 私が廣瀬さんから「宇都宮大学でも“だがしや楽校”を始めます」とお聞きしたのは数年前でしょうか。それが今ではすっかり地域に根付いていることが、昨日の“山王こどもバザール”での“だがしや楽校”、そしてきょうの発表からも感じることができました。
 宇都宮大学の“だがしや楽校”では、ベニヤ板を用いて開きます。それは、子どもから大人まで同じ目線になるようにするためです。それは、世代による上下関係を無くし、世代を越えた交流の場をつくるためです。これは宇都宮大学に限ったことでなく、“だがしや楽校”のひとつの根幹です。それを宇都宮大学は大切にしているわけです。
 “だがしや楽校”を知ってもらうための“演習”の場を設けているのは、宇都宮大学の特徴のひとつです。それは、実際にやってみることで、改善につながる場でもあります。それは“だがしや楽校”は、やっている自分が楽しい場であるからです。
 小学校で開いた“だがしや楽校”では、子どもたちからのアイディアを取り入れ、新たな遊びが生まれました。このような自由さを持っているのも“だがしや楽校”です。
 10月12日に開いた“宮っこフェスタ”(宇都宮市・オリオン通り)での“だがしや楽校”についても発表しました。ここでは昨日の“山王こどもバザール”でも行った“とちぎ釣り”と“どんぐりコマ”のおみせを開いたそうです。
 宇都宮大学の“だがしや楽校”では、PDCAを大切にしているのも特徴です。特にCHECKを大事にしています。それは、自分たち(学生さん)の『学び』にするためです。
 自分たちにとって、企画・運営力を身につける場でもあり、気付きや学びの場でもあるのが、宇都宮大学の“だがしや楽校”です。


▼東北芸術工科大学
 東北芸術工科大学(以下“芸工大”と記します)はSaさんとSiさんの2人から発表です。
 Saさんの発表は、『子どもの遊びと学び』をテーマにした授業の中で行った3回の“だがしや楽校”の紹介を中心にした発表です。3回の“だがしや楽校”とは、山形市・みなみ公園で今年(2013年)の5月・6月・7月に開いたものです。この内、2回目の6月23日は、私も取材しています。
 このほかに、授業以外のボランティア活動として、9月に“やまがた藝術学舎”で開いた秋をテーマにした“だがしや楽校”の様子も紹介しました。
 それでは、屋台(遊び)の内容は、どのようにして決めていくのでしょうか。その心は「子どもたちにいろんな体験をしてほしい」と、作る楽しさから「図工・美術の時間に繋がるように」という芸工大らしい思いです。「遊び」を作るプロセスは、各人から出されたアイディアをグループ分けし、まとまったものを「遊び」にしていく方法です。
 私が注目・感心したのは、1回目・2回目・3回目と進んでいく内、『遊び』の決め方に於いて成長していることです。1回目は「やりたい」という意見が多かった遊びを屋台にしました。2回目は、みんなで話し合い、「遊びの要素」(この時は五感を生かす)からバランスを考えて、屋台にしました。ただ、屋台によって、人数にバラツキが出ましたので、3回目は、あらかじめグループを編成して、そのグループでやりたい「遊び」を決めました。遊びを決めたら、試作を行い、楽しさや危険性などを認識しました。
 芸工大でも振り返りを重要視しています。“だがしや楽校”で体験したこと・気付きをみんなで共有しています。これもグループ毎に行い、発表し合います。
 Saさんが授業を終えて感じたことは、グループワークでは否定しないことです。それがアイディアや意見の広がりにつながります。また、「発見」は「学び」であることも感じたことです。さらに、子どもたちに口出ししたこともあったのですが、ゴールは子どもたちであって、あくまでサポートしてあげるのが私たち(学生)です。
 Saさんが“だがしや楽校”から学んだことは、コミュニケーション(グループワークでの進め方)、自分の認識の広がり(自分への見つめ直し)、子どもたちからの学びです。

 ここまでのSaさんの発表で、私(山口)がひとつ気になったのは「子どもたちに・・・してあげる」という表現をされていたことです。これについて、機会があれば、議論していただきたいと思います。最後に「子どもたちからの学び」という内容の発表していましたので、良かったとは思いますが・・・。
 もうひとつは、「遊び」のバリエーションは豊富ですし、“だがしや楽校”を開くたびに「新たな遊び」を生み出す創造力には敬服するばかりです。一方で、ひとつひとつの「遊び」を大切にすることがあっても良いのではないか、とも感じました。“だがしや楽校”で子どもたちから反響があった遊びは、ひとつの財産として残すこともありではないかと思います。
 授業の趣旨を考えますと、難しいのかもしれませんが・・・。

 そういう意味では、Siさんが発表された“だがしや楽校”では、私が何度か拝見した「遊び」を中心にした屋台でした。
 Siさんがはじめに紹介したのは、被災地・宮城県女川町の小学校で、2011年5月・6月の2回開いた“だがしや楽校”です。2回で行った8つの屋台は、いずれも私がこれまで拝見した遊びです。Siさんによりますと、現地にもある素材を使うこと、とにかく子どもたちに楽しんでもらうことを念頭にしました。
 2回の“だがしや楽校”で感じたこと、それは、2回目になると準備の段階から手伝うようになった子どもたち、おぼえた遊びのルールを下級生の子どもに教えるようになった子どもたち、“だがしや楽校”が持つ柔軟性を子どもたちの遊びから学んだことです。

 次に山形県大石田町の小学校での“だがしや楽校”です。今年9月に行いました。大石田町では3つの小学校が統合することになっています。それで、3つの小学校の子どもたち(2年生)の交流の場として、また子どもたちと学生さんとの交流の場として、開きました。
 素材はダンボールに特化しました。そして「作る」から「遊び」まで楽しめる屋台にしました。4つの屋台をダンボールというひとつの素材にしたことで、子どもたちはひとつの屋台から、ほかの屋台に入り込めやすくなり、新たな遊びを創造していくことにもつながりました。
 これをSiさんは子どもたちの「こだわり」と発表していましたが、これは「こだわり」でもなんでもなく、子どもたちの自然な姿です。
 Siさんからは「学校の先生方は子どもたちが集中している姿に驚いていました」という発表もありました。これが先生方の“だがしや楽校”からの学びであり、授業に生かすことができるか、でもあります。
 また、2時間の“だがしや楽校”で、子どもたちと学生との距離感が無くなったことも発表されましたが、これについてSiさんは「僅か2時間ですが、子どもたちと学生がいっしょに遊んだり、作品を見せ合ったりしたことによるものです」と発表していました。まさにその通りです。そこは「・・・してあげる」ではないはずです。本当の意味で子ども目線で子どもたちといっしょに遊んだからです。であれば2時間も時間は要りません。ほんの数分で子どもたちと友達になれます。それを私は今も実践しているつもりです。

 南陽市での“だがしや楽校”も紹介しました。南陽志立だがしや楽校の流れです。えくぼプラザで開いたものです。南陽市の青年の人たち、宇都宮大学の卒業生、それに芸工大生が屋台を開きました。芸工大の屋台は、グループではなく、ひとりひとりで開きました。
 ここでは、世代の違い・立場の違いを越えた居心地の良い雰囲気を感じました。それは“だがしや楽校”とは、お互いに受け入れ合うという場であるからです。

 まとめとして、“だがしや楽校”は世代を越えて楽しむことができるもの、手を動かすことで話しやすい雰囲気ができること(楽描きだがしや楽校に通じます)、ひとつの屋台(遊び)から変わっても良い、その場の発想を取り入れていること、柔軟性があること、それは子どもにとっても意味があることです・・・というのがSiさんの発表です。
 来春からは教壇に立つというSiさん。“だがしや楽校”で学んだことを、ぜひ生かしてほしいと思います。


▼山形大学(地域教育文化学部)
 発表内容をご紹介する前に、私(山口)のことからです。私は先日(10月5日)、石巻市を訪問しました。目的は石巻市湊地区の人たちとの交流です。また、石巻市立湊小学校をはじめ湊地区の現状を見聞きすることも目的のひとつです。
 なぜこれが目的になったのか、それはドキュメンタリー映画“石巻市立湊小学校避難所”山形県上映会を山形県内5ヵ所で開催したからです。上映会開催を通じて、映画を制作した藤川監督との交流関係も生まれました。また、映画に出てくる湊地区の人たちや湊地区そのものへの思い入れが増していきました。
 それで、藤川監督と相談しながら湊地区への訪問機会を探っていましたが、10月5日は私だけで訪問しました。この日は湊地区のTさんと長時間にわたり談義することができました。談義では、映画に出てきた人たちの近況、湊小学校のこれからの計画、湊地区が現在も抱える課題とそれに対するTさんの思いなどをお聞きしました。
 ところで、この日は湊地区だけでなく、石巻市内をいくつか巡りました。
 巡った先のひとつが、この日開催されていた“子どものまち・いしのまき 〜子どもが主役の子どものまち〜”(1日目)だったのです。“子どものまち・いしのまき”では、鶴岡の人たちによる“だがしや楽校”も開かれていました。
 私は現地に着くまで、“子どものまち・いしのまき”が開催されていることや、そこで“だがしや楽校”が開かれていることは、まったく知りませんでした。ですから、阿部さんや結城さんのたちの顔を見つけた時にはビックリするしかありませんでした。まさに偶然です。
 しかし、私がいつも言うのは「行動するから偶然が起こる」ということです。

 私は数年前、静岡市で“子どものまち”を見学したことがあります。やはり2日間の開催です。
 その“子どものまち”では、役所・金融機関・郵便局をはじめ、いろんな店舗が建ち並んでいました。市長選挙も行われました。3人が立候補し、選挙・開票結果、女性市長が誕生しました。
 パスポートを受け取った子どもたちは、それぞれのところでお仕事を行い、給料をもらい、“子どものまち”で使えるお金で、買い物をしたり、遊んだりしていました。私は大人にもインタビューしたのですが、「あくまで子どもたちの脇役である」という認識が浸透していました。
 終了後、スタッフ(子ども会議)の子どもたちが集まり、振り返りを行っていました。
 その静岡市には常設の“子どものまち”もあります。この常設型“子どものまち”については、あとで佐藤慎也さんと意見交換させていただきました。

 10月5日に話を戻して、この日“子どものまち・いしのまき”を見学したのは1時間あまりで、十分に見学することはできませんでした。それで、発表は私も楽しみにしていました。

 Fさんが発表しました。
 発表は“子どものまち”の説明から始まりました。“子どものまち”とは「子どもたちでつくる子どもが主役のまち」です。その目的は、子どもの思いや夢、創造性や主体性など、子どもの力を引き出すもので、自分の住むまちに誇りをもち、まちに参加していくためのきっかけづくりの場でもあります。
 1979年、ドイツの「ミニミュンヘン」が始まりで、その後世界に広がりました。日本では2002年の“ミニさくら”(千葉県佐倉市)が最初であり、現在は全国の約80ヵ所で行われているそうです。
 “子どものまち・いしのまき”は、石巻の復興について、石巻の将来を担う子どもたちが参画していくためのきっかけという意味もあります。“子どものまち・いしのまき”は、昨年が第1回目で、先日(10月5日〜6日)は第2回目でした。
 Fさんは、当日までの流れを紹介しました。佐藤慎也さんは「開催当日だけでなく、当日までのプロセスも大切です」と話されています。子ども会議を開きます。会議では、子どもたちが何をやりたいのか、どんな仕事をしたいのかを引き出します。それが決まったら、お店を見学したり、実際にお仕事を体験します。これは良いことです。地域を知る良い機会です。
 次に“子どものまち・いしのまき”の仕組みが紹介されました。
 きょうの発表でわかったのは、“子どものまち・いしのまき”には、いろんなお店や機関があったことです。それをグループ毎に紹介します。食グループ、雑貨・商店グループ、芸能・ファッショングループ、教育グループ、動物グループ、ものづくりグループ、行政グループです。
 食グループは子どもたちに最も人気がありました。教育グループでは子どもたちが先生役を担いました。雑貨・商店グループでは花屋さんなどがありました。芸能・ファッショングループは、フェイスペインティング、ヘアスタイル、写真館などです。“だがしや楽校”はものづくりグループでした。発表にはありませんでしたが、ラジオ局もありました。
 発表では、10月6日のストリートパーティーの様子も紹介しました。
 これで私も“子どものまち・いしのまき”への理解が深まりました。はやり見ていないところが多くありました。
 ただ、行政グループの紹介もあれば・・・と感じました。おそらく行政グループは“子どものまち・いしのまき”の運営に関わるお仕事をしていたのではないか、と思われるからです。

 発表の最後に、Fさんによる第2回“子どものまち・いしのまき”を終えても感想と反省が紹介されました。
 それで私(山口)が思ったことは、継続すれば、地域の特に大人の人たちへの理解がさらに深まっていくでしょう、ということです。“子どものまち”では、大人たちの理解が、とにかく大切だからです。現代は、子どもに口出しする大人、いわゆる過保護な大人が、あまりにも多いです。
 反省点として「コミュニケーションが苦手な子どもへの声のかけ方がうまくできなかった」を挙げていますが、声のかけ方に気を遣うのではなく、「“子どものまち・いしのまき”は楽しいところなんだ」ということを見せる方が大切です。楽しいと思うところに子どもたちは集います。

 復興途上の石巻で、子どもたちを大切にする心が根付いてきていることはとても良いことです。それは、山形大学(地域教育文化学部)の学生さんにとっても、貴重な体験・学びになっていると思います。
 私もあらためて勉強になりました。

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 3つの大学からの発表が終わり、5つのグループに分かれての“車座意見交換会”です。昨日の“山王こどもバザール”での感想、きょうの発表に対する感想、自分の“だがしや楽校”に対する思いや取り組みなどを発言し合うものです。グループごとに3つの大学がバラバラになるように座ります。
 予定では“車座意見交換会”は午前11時10分からのスタートでしたが、すでに11時30分をすぎています。それで、とりあえず15分程度話し合ってもらうことにしました。ところが、意見交換会は盛り上がります。そこで延長になりました。やがてお昼です。

 廣瀬さんが「良い雰囲気なので、午後もこのまま意見交換会を続けましょう」と言います。
 実は、予定では午後は、同じ公益ホールの大ホールで開かれる“公益企業フォーラム〜まちづくり編”の内、廣瀬隆人さんによる基調講演“起業によるまちづくりのすすめ”をいっしょに聴講することになっていたのです。つまり、廣瀬さんの配慮なのです。
 こうして、午後もワールドカフェ方式でグループを変えた上で“車座意見交換会”が続くことになりました。
 お昼休み前に、場所を提供してくださった東北公益文科大学教授・伊藤眞知子さん(右の写真)から「きょうは学生のほとんどが酒田どんしゃんまつりの対応を行っているため、ここには参加できませんでした。3人の先生方と『このような機会をまた設けたいです』と話し合いましたので、また是非お越しください」という歓迎の挨拶がありました。

 昼食後、大学内を案内してもらった学生さんたちは、午後1時から“車座意見交換会”を再開しました。ただ、結城さんの“公益企業フォーラム”の司会を担っているため、片桐さんと佐藤慎也さんが学生さんをサポートしました。
 それではここで、“車座意見交換会”で私が聴き取ることが発言内容からご紹介します。

○芸工大では、ものづくりの遊びでもコミュニケーションを大切にしています。

○“子どものまち”では、その仕組みがわかると、子どもは次の遊びを考えます。

○(だがしや楽校@山形・みなみ公園では)最初は寝っ転がるだけの屋台もありました。時には我に返る(遊びの原点に返る)必要があります。

○社会教育として“だがしや楽校”を行っています。学校とは異なる学びが社会教育です。

○子どもは社会全体で育てるものです。そこに“だがしや楽校”があります。

○私たちは、事前準備を大切にしています。そうでないと本番で失敗することが多くなります。その点で“子どものまち・いしのまき”は、大きなプロジェクトで取り組んでいることで、細かいことまで慣れているのではないでしょうか。プログラムの順番、仕組みづくりもしっかりしていますし、子どもたちに対する事前周知である“子ども会議”も行われ、その場限りで終わらない付き合いがあると感じました。

○芸工大のグループディスカッションでは、自分の考えを主張できる雰囲気が良いです。

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 午後も盛り上がった“車座意見交換会”が終わり、グループ毎に話し合ったことについて、5人の学生さんから発表していただきました。以下、発表内容からご紹介します。

◎3つの大学で共通しているのは「子どもが主体である」ことです。一方で違いもあります。
 “子どものまち”(山形大学)は外的な印象があります。例えば、子どもが「おいで」と呼び込んだりしています。また、社会のシステムやルールを学ぶことを目的にしています。
 芸工大の“だがしや楽校”はベニヤ板という狭い空間で密度の濃い活動を行っています。また感性を大切にしています。
 宇都宮大学は地域とのつながりや子どもたちの居場所を大切にしています。
 3つの大学の活動は一見違うように見えますが、3つの大学とも、地域とのつながりがあり、地域のシステムを知ることにもなります。そのためには「楽しみ」が必要です。
 「ゴールは子どもにある」という発表がありましたが、子どもたちがゴールを壊すことを私たち(学生)は受け入れなければならない、という話もありました。ルールは大切ですが、なんでもかんでも「それをやっちゃダメ」と言うのではなく、「そういう見方もあるんだね」とひとつの気付きとして捉えることができれば良いのではないか、という話になりました。

◎山形大学(子どものまち)は、“だがしや楽校”と違って規模が大きく、社会性もあり、子どもたちが社会に出た時にどのように生きていくかを学ぶ大事な活動です。
 同じ“だがしや楽校”でも、2つの大学には違いがあります。
 宇都宮大学はコミュニケーションを大事にしていることから、今の子どもたちのことを調べ、それでどんな屋台があるのかを調べ、それで“だがしや楽校”での屋台をつくっていきます。
 芸工大は、自分たちがやりたいことから広げていき、屋台をつくります。
 共通して大事なものは、活動を広げるには、地域に知ってもらうことが大事であり、そのためには、積極的に活動し、地域とつながりを持つこと、それから、事前準備と振り返りが大事、話が出ました。
 それから、3つの大学で共通しているのは、私たち(学生)は子どもたちのサポートであること、それぞれ目的は違っても、子どもたちを見ていることで、やる気が湧き、良い屋台づくりにつながっている、という話がありました。
 そして、屋台のつくり方、やっていることが違う3つの大学で、いっしょの企画でやってみることができたらおもしろい、という話も出ました。

◎3つの大学の違いについての話が出ました。
 宇都宮大学では、子どもと地域のことを考えています。
 芸工大は、子どもといっしょに遊びをどのようにして学びにしていこうかと考えていましたが、地域のことは考えていなかったのでは・・・と思いました。
 “だがしや楽校”は私たち(学生)が遊びを提案していますが、山形大学(子どものまち)では子どもたちから聞いて(遊びを作って)いるという違いの話がありました。
 それから、「なぜこの活動に参加しているのか」という話では、「子どもたちから得る発見があるから」や宇都宮大学からは「大学の中ではできない、地域や地域の大人の人たちのつながりがあるから」という話がありました。

◎意見交換会で出た話をまとめて感じたことは、“だがしや楽校”への見方の幅が広がったことが一番の収穫です。
 3つの大学それぞれに“だがしや楽校”の色みたいなものがあって、社会とのつながりを考えたり、地域との関わり・子ども主体の学びと遊びを考えたりしています。
 それで、このような会をやることで、“だがしや楽校”への見方の幅が広がることが楽しくて、このような機会が今後も何回もあった方が良いのではないかという話が出ました。
 また、ほかの大学といっしょになって“だがしや楽校”をつくっていくことも今後やってみたらおもしろいのではないかという話が出ました。

◎3つの大学にはそれぞれカラーはあるものの、共通して大事なのは「準備」です。中でも子どもたちへどのように介入していくかというサポートを考えることです。
 山形大学(子どものまち)では、子どもたちが始めから関わっていますが、(遊びの)試作が難しく、それで本番で問題になることもあって、大人たちのサポートが大切です。
 宇都宮大学の“だがしや楽校”では、地域とのつながりに於いて、子どもたちへのサポートをつくっています。
 芸工大では、感性において子どもたちから発せられたものをどのようにフィードバックするかということでサポートしています。
 振り返りも大事です。振り返りでは、自分たちに返ってくるということもありますが、宇都宮大学のように、それを残すことで、後に続く人たちへもつなぐことができます。
 これらを実践することで何が生まれているのか、という話もありました。
 1つ目は、一過性ではない「学びのつながり」が生まれています。その場で終わりではなく、レシピや作品を持ち帰ることで、家での学びにつながります。子どものまちでは社会に出てからのつながりがあります。
 2つ目は、創意工夫の力も生まれています。それは、現地にあるもの、その場にあるものを生かす力です。限られた中でも、自分で作り出そうという意志と工夫する能力が生まれています。それは子どもたちだけでなく、自分たち(学生)もです。
 3つ目は、地域への根付きも生まれています。それは同じ場所で繰り返し行っていることで生まれています。

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 以上が発表です。
 私が申し上げるまでもなく、5人の発表から見えてきたものがあります。それが今回の“大学交流会”が目指すところです。
 発表が終わったところで、佐藤さん、片桐さんからコメントをいただきました。

◎佐藤慎也さんコメント
 はじめは阿部等さんから“だがしや楽校”に誘われたのですが、逆に阿部さんたちを石巻(子どものまち)に誘うと思い、2週間前(10月5日)石巻に来てもらいました。その時に阿部さんが言ったのは「なんでもありです」で、臨機応変に対応してくれました。そういう阿部さんたちの対応によって、これからの“子どものまち”をどのようにしていけば良いのか、というヒントをいただくことができました。
 昨日の“山王こどもバザール”では、私たちの仕掛け方と少し違うので「どうしようかな」と思っていましたが、(やまがたこどもアトリエの)駄菓子屋とリンクすることで、私たちのおみせで稼いだもので駄菓子を買えるシステムでやることができました。
 きょうの話し合いの場も含めて、これらは大きな変化への小さなきっかけです。
 同じように宇都宮大学や芸工大の活動でも(この2日間から)何かヒントを得てほしいですし、また3つの大学がいっしょになって何かできたら、と思います。
 皆さんたちのお陰で、私たちも進歩できたと思います。ありがとうございました。

◎片桐隆嗣さんのコメント
 皆さんにとって、この2日間は、自分たちが持っているものとは異なるという異質なものとの出会いで始まったと思います。昨日の“だがしや楽校”でも違っていました。専門性の強みと弱み、広さと深さが同時にわかったのではないでしょうか。
 それがきょうは、話し合いをしていく中で(3つの大学の)共通点を見つけ出していき、違いを超えて「いっしょにやれるんだ」まで行き着いた貴重な2日間だったと思います。
 そういう姿に私たち大人は勇気付けられ、またおもしろいことをやってみようと感じました。
 今回の体験を、これからの生き方に生かしてほしいと思います。

 講演を終えた廣瀬さんが戻られ、締めの挨拶をされました。

◎廣瀬隆人さんの挨拶
 今回のような、ただ“だがしや楽校”をやるのではなく、なぜやるのか、なんでやっているのか、どうやるのか、それは自分たちの生き方にどうようにかかわってくるのかを考える機会は、必要です。“だがしや楽校”をうまくやることが目的ではなく、“だがしや楽校”と自分の生き方をどのようにつくっていくか、そこに大事な意味があると私は思います。
 また今後も機会があれば、こうやって交流し、異質なものとぶつかったり、異質なものと意見を戦わせるような場をつくっていきたいと思います。
 なかよくしてくださり、ありがとうございます。

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 私が2日間を通して思ったのは、大学を越えた学生さん同士の交流が貴重な場であることです。
 片桐さんがコメントされたように、専門性は大事です。というより本当に「重要」です。私が最近思うのは、本当の意味での専門家が少なくなったのではないか、ということです。言い換えれば、プロフェッショナルと言われる人です。ニュースで紹介された例としては、インフラでも不具合を見逃す検査官です。
 一方で、幅広い視野も求められます。仕事一筋に生きてきたある世代の人たちが定年を迎えた時に「何をしたら良いかわからない」がその例です。
 そういう意味でも、自分の特技・持ち味を生かす場でもあり、なんでもありの場でもある“だがしや楽校”には、大きな意義があります。

 それにしても、偶然には驚くばかりです。この2日間については、半年前には阿部さんから取材依頼されていたものです。一方で、10月5日の“子どものまち・いしのまき”は、現地石巻市で、その日開催していることを初めて知ったのです。もし、この日私が石巻市へ行っていなかったら、思い入れは半減していたかもしれません。
 後日ですが、佐藤慎也さんといろいろ意見交換できたのも、私が実際に“子どものまち・いしのまき”を拝見したからです。この結果、10月5日とこの2日間での私の「学び」も倍増しました。
 佐藤慎也さんから紹介されたのは、地元の石巻専修大学の先生たちや学生さんたち、そして石巻の高校生たちががんばっていたことです。

 今の社会では「違いを認め合う」ことが失われつつあります。その例のひとつが、同じ福島の人同士なのに、違いを認めることができない状況です。私などは心を痛めるばかりです。さらに危惧するのは「違いを認めないように仕向ける力」は働いているのではないか、ということです。
 そういう意味でも、このような機会がまたあれば・・・と私も思いました。

 佐藤さんがコメントで阿部さんのことを触れていましたが、この2日間の真の立役者は阿部さんです。だから、皆さんに代わって、私から阿部さんに御礼を申し上げて、本レポートを閉じます。

 

 

子どものまち・いしのまきについてはこちらのページで紹介しています

だがしや楽校

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